サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

フランスの生んだ三人の若者 神が愛でし夭折の天才

フランスは西洋文明の中心の一つである。その文明の中心が産み落とした自然科学系の三人の若者たちを比較してみたい。 パスカル、カルノー、ガロアの若者たちだ。 パスカルは数学と物理に不滅の業績を残した。真空の研究と確率の創設者であることを特筆して…

ゲーデル・コード 天才的論理学者はアメリカの独裁者の誕生を導出した

2024年のアメリカの次期大統領選は波乱含みの展開となり、どっちに転んでも政治的な混乱が避けられないだろうと大方の人は固唾をのんで見守っている。 この大統領選に関しては20世紀最高の論理学者クルト・ゲーデルの逸話を連想せずにおれないのです。 1948…

各国の水族館の数の説明変数はなにか? 予備検討

世界中には500くらいの水族館があり、そううち4割の125館が日本にあるという。 これをデータサイエンス的にどう説明するのか? aquariumpicks.com 各国の特徴量でもって、水族館の数を説明することになろう。 はじめに特徴量の候補選びだ。 人口、面積、E…

20世紀から21世紀までの物理学の創造性の移り行き

現在の半導体などを含むにした電気電子技術は原子物理学と量子論の支配下にあるだろう。言い換えると技術開発や新技術を統治しているのは物理法則だといってもいい。 ここでは「なんとか効果」(例 ホール効果)という物理的な現象の発見の数の推移を20世紀…

人類の屁による温暖化効果について(忘れないでね)

欧米人のおならが臭いとは草食人種の嘆きの一つである。どうやら、これはマイクロバイオームの研究によって、根拠が与えられたようだ。 内藤祐二氏のかなり包括的な参考書である『すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢』に、下記のような記載があったの…

チバニアンとPETM

一部の人の間で話題になった「チバニアン」は国際年代層序表にお約束のとおり組み込まれた。それを日本地質学会のサイトで確認したのだが、PETMについても補足してみたい。 geosociety.jp 日本地質学会で公開している表から、そこを拡大表記してみる。 77万…

LLM(大規模言語モデル)への幾つかのコメント

その一、エモティコンは言語なのだろうか? 顔文字だけでchatGPTと会話が成立するように訓練できるたら、愉快だ。 それな( ´-ω-)σ その二、大規模言語モデルは言語学とどう関係するのだろうか? 言語学の対象は「音韻」による言語が対象なはずだ。文字は後付…

10年前の日経サイエンスの記事からの懸念再起

2012年の日経サイエンスの記事『気候変動 想定外の加速』はネットでダイジェストが読める。 www.nikkei-science.com そこには 産業革命以前に280ppmだったこの濃度は現在395ppmである。 とあるのだが、2023年現在のこの値は「415.7ppm」らしい。 ざっくり言…

Diracと『罪と罰』の謎

Diracと『罪と罰』は最も縁がなさそうなテーマだ。しかしながら、伝えられることの少ない孤高の天才科学者の有名な逸話であります。 人に勧められて読んだドストエフスキーの『罪と罰』への感想を聞かれた時の彼の回答が、一風変わったものであった。 「面白…

あのマスダールシティのビッグプロジェクトの現在の境地

マスダールシティという壮大な都市開発は、アラブ首長国連邦 (UAE) により2006年あたりから着工されたビッグプロジェクトだ。 2016年までに200億ドル投入して、人口5万人の街を砂上に創り出す。環境に優しくユーザーフレンドリーな最先端エコシティが生まれ…

情報系の「空間」と集合論のメモ とくに暗号論に関して

暗号化理論の基礎は記号の集合を別な記号の集合に写像することにある。 その写像がエンコードであり、それは逆写像はデコードだ。全単射であることが条件になる。 ところで、その記号の集合XXXはバイナリーであることが前提。つまり、長さは問わず0,1から生…

急進的デジタル技術の社会浸透の見えない代償

先日のお題「やはり気に入らないデジタル化コネクテッド社会への遷移」つながりだけれど、デジタル化は目に見えて便利で安くて処理が早くなる。それにつられて技術開発結果は即座に市場に投入されるのが当たり前、それがアメリカモデルだった。 これが医薬品…

やはり気に入らないデジタル化コネクテッド社会への急速遷移

世の中、ChatGPTのようなAIのブレークスルーやDX、量子コンピュータだの自動運転だのとデジタル化や高速通信などITの話題で引きも切らせない。 インテル創始者のゴードン・ムーアが亡くなってもムーアの法則は永遠です、みたいな雰囲気だ。 ここ50年ほどは…

不可能性の四品種と無の5種

子ども時代に感銘を受けたSF『不可能性の四品種』というノーマン・ケーガンの作品がある。尖がった数学科の秀才、つまり「アンファン・テリブル」が技術的な不可能、科学的な不可能、論理的な不可能を超えた第四の不可能を突き止める、みたいな壮大な空論だ…

俳句とステーブル・ディフュージョン

ランキング参加中知識 話題の画像生成AI「ステーブル・ディフュージョン」に蕪村の俳句の世界を生成してもらいました。 菜の花や月は東に日は西に 絵になる俳句として有名な作品です。 まず最初の困難は英語に翻訳すること。原意は「菜の花畑の真上の空で、…

天才の不稔性仮説【再掲】

クレッチマーの古典『天才の心理学』が説くところによれば、ゲーテやモーツァルトなどの天才が直系子孫を残していないのは、よく起きる生物学的な現象であるとする。しかも、その家系の滅びる間際に天才が生じるためである。血が衰えるという表現があるが、…

ダーウィンが来たに見られる求愛行動とモテル紳士のマナー

多く論者が異口同音にいうには女性に対してウケる、つまり、好感度アップの行動様式は、生物学、もっといえば行動生物学の知見が当てはまる。 NHKの長寿番組『ダーウィンが来た』は、そうした事例を倦まずたゆまず放送し続けてきた。つまり、家族形成に向け…

この世はシュミレーション(シュミレーティッドリアリティ)へのささやかな不平

『マトリックス』がこの世はシュミレーションという考え方を世に広めるのに預かって力があった。それ以前にもSFでは同様のアイデアをもとにした小説があった(例えば、レムの泰平ヨンシリーズ) その淵源はプラトンの洞窟の比喩にあるらしいことは、この「水…

サイバーセキュリティにみる世界の再魔術化

世のなか、RPGゲームだのファンタジー映画だのが幅を利かせている。それと同時代性を持っているのが、サイバーセキュリティにおける防衛と攻撃(サイバーアタック)だ。 やっていることは、それぞれの高度なテクノロジを使っているにはいるのだが、その見か…

各国の天文台の分布と数

新しいMathematica13を使って、世界の天文台の分布をみてみよう。 赤い点が天文台の場所だが、北半球の先進国に集中しているのは言うまでもない。 天空を観察するにも経済的余力と動機付けがいるのだ。 2020年代のデータと想定される。 上位の国を並べてみよ…

五臓六腑の三焦とはどういうものか

漢方医学もしくは中国思想の身体感の要は五臓六腑だろう。 五臓(心臓・肺臓・肝臓・腎臓・脾臓)と六腑(胃・小腸・大腸・膀胱・胆嚢・膀胱・三焦)がその内訳である。洋医学の解剖学的な見方と重なる部分もあれば、そうでない部分もある。 ja.wikipedia.or…

理系の幕末志士 佐久間象山

幕末の志士というと坂本龍馬、西郷隆盛などが思い浮かぶ。あるいは吉田松陰や高杉晋作、桂小五郎などもそうだろう。一方の幕府側だが勝海舟や山岡鉄舟、新選組の面々なども人気がある。 そうそうたる面々なのだが、いずれも政治的な策士、行動家であり、武道…

破滅のロングテール

シナリオだけものしておこう。 始めに、人の死因を論じる。それから種の絶滅を比較する。種の絶滅と同様に文化や宗教の消滅を概観してもよい。 そこでの教訓の仮説はトルストイのアンナ・カレーニナの序言から、 「幸福な家庭は似通っているが不幸な家庭はそ…

チャットGPTのアインシュタインとベルの定理についての見解

「アインシュタインの量子力学のベルの定理についての意見はどうようなものか?」 ChatGPT says: アインシュタインは、量子力学の発展に大きく貢献しました。彼は、量子力学の理論の中でも重要な役割を果たした、ベルの定理を提唱しました。 ベルの定理は、…

CRISPRと長寿化

遺伝子編集の精緻化と簡易化を実現したCRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)は2020年にノーベル化学賞の対象となった。 1塩基単位でDNAを編集できるというのが触れ込み。詳細は他の記事をあたられたい。 www.cosmobio.co.jp そのネーミングセンスの良さ…

ラッセルの七面鳥のたとえは「人類の繁栄」にどこまであてはまるのか

バートランド・ラッセルは絶妙なたとえで哲学上の問題を示してくれるのだけれど、帰納法の問題についても「七面鳥のたとえ」が有名だ。 少々長いけれども、チャルマーズの本から孫引きしよう。 七面鳥は、飼育場での最初の朝、九時に飼を与えられたというこ…

史上最高な科学者の代表は誰か。本のタイトル数で決める。

表題の問いについては、おおよその見当はついている。 アインシュタインか、ダーウィンかだ。 いくら偉大であってもピタゴラスやアルキメデス、ニュートンやガリレオではないだろう。いくら天才でもガウスやヒルベルトは登場することはないだろう。 古今東西…

腎臓の糸球体における足細胞

1922年森鷗外は腎機能障害で亡くなった。享年60歳。病名は腎萎縮。軍医だったプライドもあってか自己診断して、もう治療するなとして泰然自若として死を迎えた。 腎臓の主機能を果たす糸球体は脳細胞と同じく、再生不能であり、徐々に壊れていく。 60歳を…

いわゆるホモサピエンス君たちの能力減退の証拠集め

同じ種族であったネアンデルタール人との生存競争で生き残ったのがホモサピエンスの諸氏なのだが、これが最後の同種併存だった。つい一万年前ごろまでは生存していた。 ここでは脳の容量がネアンデルタール人の方がやや上であったことを指摘しておきたい。彼…

グローバル技術史の貧困とその症状

ホモサピエンス全史とか、出口治明の歴史やマクニールの業績とか、世界史眺望ものは豊穣の季節を迎えている。 それに引き換え、気の毒としか言えないのが、科学技術史関係の参考書の不毛であろう。おそらくは山本義隆一人が気を吐いている。それも物理学史に…