「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」のお国ぶりがわかるかもしれないと思い、1991年にスタートしたイグ・ノーベル賞の受賞者数が国別にどうなっているかを調べてみた。
1991年から2014年までの受賞者の出身国(一部推定)をカウントしてみた。法人や不特定多数の場合は一個人とみなしている。法人や政治家が受賞しているのは不名誉な受賞といっていいであろう(日本の気象庁の受賞は誤りだったとされている。「ナマズによる地震予知の研究」を気象庁の業績と誤解したのだ。従って、そのケースはカウントしていない)
その集計結果を受賞者数で降順に並べ替えて、左の列に順位をつけたのが下表である。
これを主観的に読み解いて、以下の様な「深遠なる」考察を得ることができたので、興味がある方は味読、興味のない方は未読してほしい。あるいは、これ自体が名誉あるイグ・ノーベル賞ネタかもしれないのだ。
ノーベル賞とかなり似た国が上位に登場してきている。こちらの集計の16各国で11カ国が上位に出現しているのは偶然ではあるまい。イグ・ノーベル賞のもとはサイエンス・ユーモア雑誌『風変わりな研究の年報』 からなので自然科学系の研究傾向の相関性が出現していると思われる。
とりわけ目を引きつけるのは、あの国が上位に存在しないことである。
それは「ドイツ」だ。お堅いお国柄なのが災いしたのか、イグ・ノーベル賞選考者のリサーチに引っかかるようなヤバイ研究がないのか、ユーモアのセンスが異質なのかはよくわからない。それにしてもアメリカ人の白人にはドイツ系移民が最多であることを考えると不可思議な現象である。
アメリカが1位であるのは、授賞式の舞台がハーバード大であり、その生え抜きの知性が選考委員になっているので当然であろう。イギリスが2位であるのも英語圏であり、共通する文化がもたらした結果であろう。なんといっても「モンティ・パイソン」の母国だ。それに両国とも幾多の科学的奇人には事欠かない。マーティン・ガードナーやピックオーバーの本がその陳列台であろう。
そして、極東の島国が3位に位置することになる。
日本人はここ数年、イグ・ノーベル賞の常連となった感がある。2位のイギリスに迫る人数だ。アメリカ人は日本の商品や文化を受容しているあかしなのだろう。それに加えて、親米的でお間抜けなユーモアセンス(ミッキーマウス好きなど)が似通うものがあるのだろう。
なお、イグ・ノーベル賞と日本人の国民性との関係は別な機会に検討したい。
ノーベル賞の国別受賞者との相関については、思想家アーサー・ケストラーの『創造活動の理論』が示唆的である。ケストラーはこの本で「ユーモア」を創造性の指標として重視していた。単純化すると思考の文脈が別の観点に切り替わるということが発明発見とユーモアの類似点なのだ。
科学分野でその先行的独創性=創造性が評価されるノーベル三賞(物理、化学、生理・医学)で日本が多産なのも、そのユーモア力と無縁ではないのだろう。*1 その定量的な評価としてスピアマンの順位検定をすることも考えたが、ペア集合が同一ではないのでここでは見送りとした。
::参考文献::
イグ・ノーベル賞 世にも奇妙な大研究に捧ぐ! (講談社+α文庫)
- 作者:福嶋 俊造,マーク・エイブラハムズ
- 発売日: 2009/09/17
- メディア: 文庫
- 作者:マーク・エイブラハムズ
- 発売日: 2005/08/26
- メディア: 単行本
奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)
- 作者:マーティン ガードナー
- メディア: 文庫
奇妙な論理〈2〉なぜニセ科学に惹かれるのか (ハヤカワ文庫NF)
- 作者:マーティン ガードナー
- 発売日: 2003/02/01
- メディア: 文庫
- 作者:クリフォード・A. ピックオーバー
- 発売日: 2001/10/01
- メディア: 単行本
【追記】ケストラーの隠れ名著。創造性の研究は古くさいと言い切れるかどうか。
ジャーナリストとして出発したケストラー自身、多産な人だった。
創造活動の理論〈上巻〉芸術の源泉と科学の発見 (1966年)
- 作者:アーサー・ケストラー
- メディア: -
- 作者:アーサー・ケストラー
- メディア: -
*1:そうなるとドイツ人のユーモアが例外になるが、これは後日の研究テーマとしたい。