食糧生産は21世紀にはいっても増産を続けている。これは持続的なのだろうか?
ひところ、ランドラッシュというのが食糧問題のキーワードになった。増産しようにも開拓できる土地が限定されているため、先進国や新興国で農地の取り合いが起きているという。
また、バーチャル・ウォーターもしきりに取り上げられた。牛肉や小麦生産に必要な水の量が食糧の数十倍から数百倍になる。世界の淡水資源は有限であり、地下水や河川の水源は限界にきている...というものだった。
世界の人口は2050年にピークを迎えるとされ、土地も水も限界に近づいてきているというのが、それに対して早急に対策を講じなければならないというのが、国連のSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の目標の一つである。
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世界人口は2019年で77億人であり、2050年には97億人になると予想される。上記の問題解決は焦眉の急であることは確かだ。
ここで、あまり取り上げられないのが、肥料の問題であろう。そもそも、現在の最大の穀物生産地の一つ、アメリカ中西部は20世紀前半に大規模な表層土流失が起きて、大問題になったことがある。それを回復させたのは、地下水(枯渇が噂のオガララ滞水層)利用と肥料の大量投入であった。
その肥料の三大元素は、窒素・リン・カリウムだ。そのリンが、それほど資源として採掘年限が長くないだろうというのが、ここで特筆したいトピックだ。
まずは、リン(P)に関してはリサイクルされていない。垂れ流し状態であることは思い出しておこう。湖や海に流失したリンは富栄養化という環境問題の原因にもなる。回収しよともしていない元素なのだ。
ところでリンは生体のエネルギー源になるのも思い出しておこう。
ATPは有名だ。右図のPの部位にある。
RNAのような遺伝子分子にもリンは不可欠。ついでながら、RNAとATPは似ている。
人体の重さの1%はリンであるという。しかも、遺伝子やエネルギーを担う重要な分子のかなめであるのだ。
よって、一昔前はリン鉱石を採掘するのにグアノのような鳥の糞の鉱物を使っていた。
2007年、カナダのパトリック・デリーは、ハバートの有名な「ピークオイル」定理をリン鉱石に応用した。その結論によると世界は1989年にすでにリンのピークを過ぎていることがわかったのである。
ハバートのピークオイル理論は、どうやら地表近くの石油採掘限界については正しかったが、海底油田やタールサンドまでは含めていなかった。よって、多少割り引く必要がある。
それにしても21世紀中にリンの生産ピークが来たら、どーするのであろうか?
農地は再び、荒れ地に逆戻りすることになる。表層土の流失も悪化する。
【参考資料】
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そのまえに、こちらも御一読を。
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