サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

カルフォルニアの乾き方(長期傾向をみる)

 なんでも2021年6月になって、アメリカのカリフォルニアの異常高温が始まったようだ。例年どおりになった感じがあるので、異常という接頭辞は不要になるかもしれない。

 カリフォルニア州の三都市の年間の気象情報を調べてみた。その三か所は州都サクラメント、その西側のサンフランシスコ、そして南部のロスアンゼルスである。

f:id:Hyperion64:20210604114836j:plain

 

 はじめは、サンフランシスコの平均気温データから。

 1980年から2020年までの月次の平均気温をグラフにした。平均気温なので朝夕の冷却が含まれいてそれほど高いわけではないが、2015年以降に上昇する。

f:id:Hyperion64:20210604115100j:plain

 サンフランシスコの年次降水量データは乾燥化を劇的に物語る。平均気温と同じく2015年以降に下がる。

f:id:Hyperion64:20210604115407j:plain

  もはや「霧のサンフランシスコ」ではない。昨年、森林火災が原因で空がオレンジに染まる写真が有名になったので、いまや「塵のサンフランシスコ」だ。カリフォルニアの森林火災の統計も下に補足している。

 

 州都のサクラメントは内陸にあるので、寒暖の変化は大きい。同じ期間での月次平均気温を示す。2015年以降は高温化しているようだ。

f:id:Hyperion64:20210604115556j:plain

降水量はどうだろうか?

f:id:Hyperion64:20210604115704j:plain

 サクラメントは見事に乾燥化しているのが、わかる。

 

では南部にある最大の都市ロスアンゼルスではどうだろうか?

同じ期間の月次平均気温をみる。

f:id:Hyperion64:20210604115855j:plain

やはり、2015年以降に高めとなる。2020年は下がる。

降水量はどうであろう。

f:id:Hyperion64:20210604120036j:plain

 2000年の最初の10年は降っていた。それでも数十ミリ/月だ。もともと乾いた大地を開拓したのがロスアンゼルスである。

 三都市の気候データだけでは説得性がないかもしれない。さらに、 カルフォルニア州の山火事統計を参照してみる。

 カリフォルニア州森林消防局(CAL FIRE)の出している統計情報で2010年から2020年までの年間の森林焼失面積()をグラフにまとめてみた。

f:id:Hyperion64:20210606201136j:plain

 2020年は6000㎢であり、茨城県くらいの大きさの森林が消えうせたことになる。カルフォルニア州の面積は424,000㎢であり、1.4%を焼失したというとインパクトがわかろう。

 2016年を境に急に悪化している。2019年は少ないが、昨年は最悪の年になった。州史上最大の森林火災が起きたのだ。

 2021年5月時点で2020年の同時期を上回るペースと報告している。

 

 2000年代の21世紀のはじめの10年間、世界駅に温暖化が緩んだ。それを地球温暖化停滞現象(ハイエイタス)と呼ぶ。それと基調はお穴時だったカリフォルニアの三都市は2015年以降に高温化のノッチが上がったのは、ご覧の通りだ。森林大火災が頻発し、規模が拡大したのも2015年からだろう。

 

 そもそも日本の気象庁世界の異常気象サイトでもカリフォルニアあたりは高温異常の常連になっている。それも2020年だけではない。

 人類が森林を伐採して、広大な宅地と農地を乾燥した地域に創造したのが夢の新天地カリフォルニア(地中海式気候で気持ちいい陽気の地域)だった。今や農地は地下水水位の低下に苦しめられ、ダムの渇水も常態化しつつある。農作物の豊富なカリフォルニアの乾燥化は他人事ではない。柑橘類やワイン、アーモンドなど世界に多くの食料をもたらしている土地なのだ。

 この地域はゆるやかに乾きつつあった。人類が移り住むことで乾燥化と高温化は弾みがついた。

 あと一世代程度でカラカラな地域になってしまう可能性が高い。

 

  例の『ファクトフルネス』って本はこのような足下の問題を無視したFactに満ちていたように思う。自己満足するデータを集めれば、どうにでも現在の状況は問題なしと主張できる。過去うまくやってきたから、明日もそれが続くというのは半面でしかない。満足した豚であるより、不満足なソクラテスたれ。

問題意識や危機感がなければ解決もできないのだが。

 

 余計な情報であるけれど州の財政は破綻状態にある。つまり、公共的な政策が機能不全にある。 この本の最終章がカルフォルニアの財政危機を扱っている。