サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

頭の硬いハードSFファンの嘆き

 先進国、とくにアメリカの停滞が典型的なのだが、その科学技術の現状は嘆かわしいという往年のハードSFファンは多い。自分が真っ先にそうだ。

 だいたい、AIや量子コンピュータやら5Gなど情報通信技術がやたらにもてはやされるのが疎ましい。しょせんは電子と光を制御しているに過ぎない。レプトン族の一番初歩的な素粒子をどうにかこうにか制御しているだけだとハードSFファンは指摘する。

ニュートリノ族の利用は微々たるものだ。それにハドロン族は置き去りに近い。

 ハドロンは物質のコアだ。大半の物質はハドロンが中心に構成される。でも固体物理学が把握しているのは原子レベルであることを、そして固体から放出される電子と光がその主要なアウトプットである。

 「銀河規模でみたなら21世紀の人類の科学技術はどれほど幼稚なことか!」

まさに頭の硬くて現実感がないハードSFファンが言いそうなことだ。

幼稚なのはまだしも、デジタル情報通信技術だけが肥大しているのは最近の傾向だ。

 どうもこの科学技術の進化の配分はおかしいと硬骨漢=頑固者のハードSFファンは疑いだしている。医療、建築、海洋工学、宇宙開発、モビリティ、エネルギーはすべて遅れているか情報通信技術の依存性が高い。

 その結果は格差病理社会への傾斜だ。どの国もそうなりつつある。COVIT19はそれをさらに悪化させた。情報通信技術はスモールイズビューティフルの流れでもあった。

 だが、塵もつもれば山となる。スモールであることはスマホに体現されている。しかしまた、スマホは格差病理社会の典型的デバイスだ。人が情報を支配すると見せかけ、情報により人が支配される制御端末。ノーフリーランチを絵にかいたようなものだ。

 ひとつの格差拡大のストーリーを示そう。ウォルマートという巨大流通チェーンはアメリカ人に格安商品を販売した。人びとはその安さと品質と種類の多さに幻惑された。

 ウォルマートはアマゾンほどではないがITを駆使して格安さと消費者取り込みの成功例となった。昔ばなしだがそれは拡大再生産されている。

 その結果はアメリカの弱小製造業の一掃と中国の台頭だ。多くの実のある職場はアメリカ本土から消え去り、ブルシットジョブが大量に生みだされた。中国も例外ではない。

 先進国は似たり寄ったりの苦境におちこむ。一握りのエクセレントな仕事と大量のむなしい仕事というのが労働者に提供された状況なのだ。

 自分もそうだが、夢想家であるハードSFファンは時空をまたにかけるような職場がやがては到来すると望んでいた。かわりに到来したのはウーバーイーツだったわけだ。

 ハードSFの描く華麗な科学技術の世界はやってこずに、科学技術がもたらしたのは生きるにハードでブルシットジョブがあふれた世界となったわけだ。

 

 

 

 アメリカの若者の苦境はこちらでも語られている。

hyperion64-oranization.hatenadiary.org