サイエンスとサピエンス

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アメリカ中西部穀倉地帯 怒りの葡萄の21世紀的行方

 ジョン・スタインベックの名作『怒りの葡萄』でオーキーと呼ばれる農業からあぶれた失業者たちが職を求めてさまよう。そんな時代に起きた大平原地帯の干ばつと不毛化という危機はどう回避されたか、その問いは、自分的にはしばらく答えのないままであった。

 我ら日本人がお世話になっている食糧の供給元の一つはアメリカであり、大平原地帯以西の穀倉地帯であるのはご承知のことと思う。

 20世紀前半、つまり、1930年代にこの豊穣の地が砂塵の覆う不毛の荒れ地に変貌した。機械化に過度に依存した農民たちの過剰な生産追及の結果だったといえば、さしあたり不正確であろうと事情は飲み込めるだろう。

 この時代には700万人の農民がいたとされる。彼らの大半が農地と職を失った。奇しくも大恐慌と被っている。大平原地帯のダストボール問題は国家レベルの対策を必要としていたのだ。

 その後の回復過程であるが、政府と業界は一丸となって、土壌改良に挑んだ。とくに灌漑設備の増強と化学肥料の投入が目玉だったのではないか。

 とくに、ニューディール計画は、巨大な水利系を構築することで、大平原の土壌流失を防ぐ手立てでもあった(歴史書はそのあたりを説明してくれてないような気がする)

それにオグララ帯水層の地下水利用が促進したと思う。

 なんにせよ、この時代の前後にアメリカでは巨大ダムや治水施設が多数誕生していることは、ほぼ確実だろう。巨大なフーバーダムなんかもそう当時の産物だろう。

 20世紀後半にはその効果は如実に現れた。食糧生産大国であり消費大国であるという夢のアメリカ型帝国と生活スタイルの出現である。

 このお話しは、しかし、21世紀に入って、暗転の兆しを見せている。化学肥料の投入での生産性向上は飽和している。それに加えて、中西部以西は毎年の干ばつだ。記録的干ばつというニュースが何回報じられたろうか?

 巨大ダムの効能は色あせ、貯水池は低水位を更新している。頼みの地下水源であるオグララ帯水層も年々減少してきて、あと数十年持つかどうかだ。

 1930年代に国家レベルで対策を講じたような、そんな有効な施策があるかどうか、自分にはわからない。今流行りの脱カーボン技術や自然エネルギーの利用などとは別次元の問題であるように思える。

 けれども、いずれにせよそうした施策は問題先送り型であることは確実であろう。

 食料自給率がめちゃ低い国の一市民としてはアメリカ穀倉地帯の甦りを切に望むものであろうが、歴史の観照者としては悲観的な見通しに陥るのは避けられない

 

【参考文献】

 

 


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