遺伝子編集の精緻化と簡易化を実現したCRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)は2020年にノーベル化学賞の対象となった。
1塩基単位でDNAを編集できるというのが触れ込み。詳細は他の記事をあたられたい。
そのネーミングセンスの良さは欧米系の特徴だ。ついでだから、本来の clustered regularly interspaced short palindromic repeats も覚えてしまった。
実は紹介したかったのが、人への応用が走ってしまっているらしいこと。
エリザベス・パリッシュというバイオテクノロジー企業CEOご自身がCRISPRを使った遺伝子改変を実践中ということなのだ。2015年にテロメアに対する遺伝子編集により若返りというより、老化停止の遺伝子組み換えを開始している。それを現在に至るまで継続している。定期的な注射(とても高価なものだそうな)により「若さ」を維持していると主張している。
上記のYouTubeでは45歳なのだそうだ。でも、やっぱり45歳並みにしか見えないのは自分だけであろう。
テロメアは細胞分裂毎に擦り減っていく。それを改変しているというのだから、遺伝子編集テクノロジーの進歩は恐るべしだ。
ワインバーグのがんの教科書によれば、「がんの特徴」として,細胞死の耐性,転移能の獲得などの6つの主要ながんの特徴のひとつとしてテロメアが減らないことを指摘している。がん細胞の七つの大罪ならぬ、6つの大罪だ。
1)限界のない自己増殖能力
2)増殖抑制因子の無視(がん抑制遺伝子)
3)細胞の自己破壊の回避(アポトーシス回避)
4)テロメアカウンターの無効化
5)がん組織を養う血管構築能力
6)転移能力
がんの治療の研究者たちはテロメラーゼというテロメアを延長させるがん細胞のタンパク質を阻害する薬剤の開発を行っている。
なので、セレブたちが不老不死を手に入れたと羨むまえに、彼らの人体実験の結果をじっくりと見定めようではないか。バイオテクノロジー企業CEOはそれの逆張りを実践している。もちろん、正常細胞をターゲットにして行っているのだが、その一部でもガン化しないことを祈ろう。
【参考文献】
この本の第四章にがん細胞のテロメアの特異性を説明していくれてます。
専門家たちの書いたかなり理屈っぽい本ですが、読みではありますね。
ワインバーグはテロメラーゼの活性化因子の働きを発見してます。
「がん細胞の特徴とその意味」の自前ブログのリンク。6つの特徴は近代文明と奇妙な相同性をもっている。