量子力学で扱うスピンは位置や運動量とやや異なるようだ。
オランダのネーターボーイズの一人ヴェルデンの代数学史はその経緯を記載している。
1878年にクリフォードが多元数代数を定義。リプシッツが4次元回転にそれが利用できることを証明した。Diracが1928年に提出した相対的的量子力学方程式でのDirac行列は4次元における二次計量を不変にする回転行列の一種だった。ワイルとブラウアーがクリフォード代数との一致を指摘。
ローレンツ変換は4次元空間の回転だということを思い出しておきましょう。
魔訶不思議なのは電子のスピンが原子核をめぐる周回軌道(水素原子モデル)を定式化しただけで、自動的に導出されてくる。Dirac恐るべし!
電子スピンはもとは電子の自転が発想の原点だった(朝永の本で突っ込んだ検討がなされていて、トーマスプリセッションを考慮すると自転モデルでもOKなんだとか)
電子スピンはもとは電子の自転が発想の原点だった(朝永の本で突っ込んだ検討がなされていて、トーマスプリセッションを考慮すると自転モデルでもOKなんだとか)
しかし、電子の自転という自然な類比は「自由運動」のDirac方程式で意味が保てなくなるようだ。
原子核を公転している電子ではなくて、ポテンシャルのない空間中を等速運動している電子の解はすでにスピンを含んでいるのだ。スピン運動量は電子の内在的な物理量なのだ。
この奇妙さはNewtonーEuler流の古典力学と対比するとわかる。粒子の運動は空間中の等速運動と粒子自体の回転運動とは別物になっている。相互に独立に記述できる。角運動量は3個の自由度があり、位置と運動量はそれぞれ3個の自由度がある。
それに対して、相対論的量子力学では両者は合体しているのだ。どうも純粋な回転運動を扱うことが難しいようなのだ。
これはどうしてか?
ローレンツ変換が原因だろう。運動が相対論的であるためには4次元回転に対して不変なローレンツ変換性をもつのがDirac方程式。そして、3次元回転はローレンツ変換の特殊ケースであるとすると3次元の回転運動もローレンツ変換に従わなくてはならない。もちろん時間要素のない幾何的回転は扱えるが、時間とともに回転する運動はローレンツ収縮を含んだものになる。剛体回転は原理的にありえない。
スピン運動量は特殊な性質をもつ。720度回転しないと元に戻らないとか。

