サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

フランスの生んだ三人の若者 神が愛でし夭折の天才

 フランスは西洋文明の中心の一つである。その文明の中心が産み落とした自然科学系の三人の若者たちを比較してみたい。

 パスカルカルノーガロアの若者たちだ。

 パスカルは数学と物理に不滅の業績を残した。真空の研究と確率の創設者であることを特筆しておこう。30代(39歳)で亡くなる。

 カルノー熱力学第二法則の基礎をもたらした。エントロピーの概念はそこから生じる。30代半ばで世を去る。国内で伝記がないのが残念である。

 ガロアは勿論、ガロア理論だ。22歳で亡くなる前夜にかいた論文でガロア理論を書き残す。数学(代数学)の離れ業、神技としかいいようがない。彼の悲劇的生涯は多くの人の共感と悲嘆をそそってやまない。

 当時の基準では30代はわかものとはいえないかもしれないが、現代人からすると若者であろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲーデル・コード 天才的論理学者はアメリカの独裁者の誕生を導出した

 2024年のアメリカの次期大統領選は波乱含みの展開となり、どっちに転んでも政治的な混乱が避けられないだろうと大方の人は固唾をのんで見守っている。

 この大統領選に関しては20世紀最高の論理学者クルト・ゲーデルの逸話を連想せずにおれないのです。

 1948年にゲーデルはUSの市民権を得るための面接を受けることとなった。アインシュタインとモルゲンシュテルンが保証人になった。ハオ・ワンの評伝から引用する。

受験しなければならないお決まりの試験がたとえ易しいものでも、ゲーデルは真剣に予習して、合衆国憲法を丹念に勉強した。面接の前日、ゲーデルはモルゲンシュテルンに、合衆国が独裁制に移行する論理的、法的可能性を発見したと語っていた

 この論理的、法的可能性こそは合衆国憲法の抜け穴であり、法的拘束力のわくないで独裁制を確立できるという論理学者の予期せぬ発見なのだ。

かりにT前大統領がこれを自己の法的根拠として活動したらという一抹の不安がある。

幸いにしてこの発見の詳細は開示はされていない。彼の残した膨大な遺稿のなかに埋もれているのだろう。この遺稿には、ほかにも「神の存在証明」や「輪廻宇宙論」とか天才の閃きが書き込まれていると言われているのではあるが。

 こうしたゲーデルの発見をかつてダン・ブラウンの『ダヴィンチ・コード』にかこつけて「ゲーデル・コード」と呼んでおこう。

 

 

ちなみに、MicrosoftのCopilot(無料版)に質問してみた。

Q 「クルト・ゲーデルが発見したアメリカ合衆国憲法の抜け穴で、独裁政権を可能のにする解釈を教えてください。ステップ倍ステップで教えてください。

 

Copilotの回答

「こんにちは。Bingです。クルト・ゲーデルが発見したアメリカ合衆国憲法の抜け穴についてお答えします。ただし、この解釈は、クルト・ゲーデルが発見したとされる抜け穴についての一般的な説明であり、法的な正確性や実際の適用可能性については保証できません。また、独裁政権を可能にする解釈については、私たちは推奨しません。それでは、以下のステップで解釈を説明します。

1. クルト・ゲーデルは、アメリカ合衆国憲法の第一修正条項に注目しました。この条項は、言論の自由、出版の自由、宗教の自由、集会の自由、請願の自由を保障しています。
2. ゲーデルは、この条項が、独裁政権を可能にする解釈を許容することを発見しました。具体的には、政府が言論の自由を制限することで、独裁政権を樹立することができると主張しました。
3. ゲーデルは、この解釈が、アメリカ合衆国憲法の他の条項と矛盾することを指摘しました。しかし、彼は、この解釈が、憲法の条項の一部として存在することを示しました。
4. ゲーデルは、この解釈が、アメリカ合衆国憲法の枠組み内で合法的に適用されることを示しました。彼は、この解釈が、憲法の条項の一部として存在することを示しました。
      以上が、クルト・ゲーデルが発見したアメリカ合衆国憲法の抜け穴についての一般的な説明です。ただし、再度強調しますが、この解釈は、法的な正確性や実際の適用可能性については保証できません。また、独裁政権を可能にする解釈については、私たちは推奨しません。」

たしかにもっともらしい説明だけれど、ゲーデルがこんな自明のロジックを見つけて興奮したとは思えない。 

 言論の自由を奪えば独裁制に貢献する。歴史的にはファシズム体制はそうしてきているのではあるけれど、言論の自由を奪ってから民主制を簒奪するって順番が逆じゃないかと突っ込みたくなりますね。

 

 それとCopilotのリンク先

ゲーデルと米国憲法の論理的矛盾 - FIRSTonline

このサイトにある「ゲーデルはいつもの真剣さと細心の注意を払ってこのテストの準備をし、最終的に、建国の父によって設計された米国の制度システムには、独裁とファシズムへの扉を開く可能性のある論理的な脆弱性があることを発見しました。」は、ほとんどハオ・ワンの書物の書き写しに見える。

 

【参考文献】

 邦訳のある書籍で最も浩瀚で親しくゲーデルに接した作者ならではゲーデル

 

各国の水族館の数の説明変数はなにか? 予備検討

 世界中には500くらいの水族館があり、そううち4割の125館が日本にあるという。

これをデータサイエンス的にどう説明するのか?

 

aquariumpicks.com

 

 各国の特徴量でもって、水族館の数を説明することになろう。

はじめに特徴量の候補選びだ。

 人口、面積、EEZ,(排他的経済水域)面積、海岸線の長さ、島の数、一人当たりGDP、動物園の数、博物館の数などが思い浮かぶ。

 市町村レベルの自治体の数もいいかもしれない。これを精密化して海岸線をもつ市町村の数としよう。漁港の数も使える可能性がある。

 似たような変数を省く。面積は不要だろう。海岸線の長さだけでいい、あるいは海岸に面した自治体数と海岸線の長さはどちら一つに絞りたい、みたいにする。

これらを分析対象のすべての国の平均値で正規化する。

 クラスター分析と相関分析を行う。

そうすると浮かび上がるだろう。とくに日本の特徴量はなんだろうか?

人口当たりのEEZ面積とGDPあたりのような気がする。

 

20世紀から21世紀までの物理学の創造性の移り行き

 現在の半導体などを含むにした電気電子技術は原子物理学と量子論支配下にあるだろう。言い換えると技術開発や新技術を統治しているのは物理法則だといってもいい。

ここでは「なんとか効果」(例 ホール効果)という物理的な現象の発見の数の推移を20世紀から21世紀まで10年単位で集計してみた。

 

縦軸は効果の数であり横軸は10年刻みの年数である。

 わかるように20世紀前半1930年にピークがあり、第二次世界大戦を底にしてから、60年代と70年代に第二の山がある。それ以降は減少に転じている。21世紀も回復はしていない。原子物理学と量子論を土台とする物理現象の新規発見は増えていないのだ。

 西洋国家における物理学者の数についての興味深い数値がある。

「節目の1900年時点でドイツには103人のアカデミックな物理学者がいた。うち16人が理論家である。...他国ではもつと少ない。米国には99人の物理学者で3人が理論家。英国では76人いて、理論家は2人にすぎない」とM・エッケルトが報告している。

 20世紀前半のアカデミックな物理学者の総数などは1930年代といえども1000名未満であっただろう。

1930年代は後期量子論とその応用としての(電子)物性論が発達した時期である。

現代物理学の黄金期でもあった。

 それほど少ない共同体であっても、ここ数十年の発見数を上回ったということは何を示唆しているかだ。

 おおむね、ITのもとになる電気電子技術は組み合わせと微細化で現代のような高度なレベルを達成したということだ。新しい法則の適用による抜本的な基礎技術が絶えず加わっているのではないということだ。

 

 

人類の屁による温暖化効果について(忘れないでね)

 欧米人のおならが臭いとは草食人種の嘆きの一つである。どうやら、これはマイクロバイオームの研究によって、根拠が与えられたようだ。

 内藤祐二氏のかなり包括的な参考書である『すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢』に、下記のような記載があったのだ。

 

 日本人と他の欧米、中国等の11カ国データの比較解析の結果、

 食物繊維の発酵により生じた水素が、他の11カ国ではおもにメタン生成に消費されるが、日本人ではおもに酢酸生成に消費される

 という部分は著者によりボールドで強調されてたりする。メタン生成が色濃いのは図2によるとペルー、ロシア、スウェーデンアメリカだ。

 単なるおならの臭いだけならともかく、最近ではメタン放出は北極圏で極めて増えているとレポートされている。

 先ずは人類自身の腸内から変革したほうがいいのかもしれませんな。

 

(239) “温暖化の時限爆弾”とける永久凍土 - YouTube

 

 

 

 

チバニアンとPETM

 一部の人の間で話題になった「チバニアン」は国際年代層序表にお約束のとおり組み込まれた。それを日本地質学会のサイトで確認したのだが、PETMについても補足してみたい。

 

geosociety.jp

 

 日本地質学会で公開している表から、そこを拡大表記してみる。

77万年前か12万年前までにチバニアンが鎮座している。

    

 

さて、もう一つの覚えたてホヤホヤのイベントが5600万年前のPETMだ。

ja.wikipedia.org

 

暁新世・始新世境界の温暖化極大期がPETMのもとの定義だが、ここで急速な温暖化が起きているのが最近の注目の話題であるようだ。

現代(人新生: Anthropocene)と同じく急速な二酸化炭素濃度の上昇も起きたのだから、科学者たちがどよめいて、好奇心をそそるのは理解できる。

 

このオリジナルの国際年代層序表ファイルはこちらを参照されたい。

geosociety.jp

 

【追記】

 上記の層序表に2300万年前に「アキタニアン」というのがあるのが、気になった。

 

 

【参考文献】

 気候変動の地球規模での経過についての最新研究が手際よくまとめられている。

専門家や専攻する学生でなくても楽しく読める。

 

LLM(大規模言語モデル)への幾つかのコメント

その一、エモティコンは言語なのだろうか?

 顔文字だけでchatGPTと会話が成立するように訓練できるたら、愉快だ。

それな( ´-ω-)σ 

 

その二、大規模言語モデル言語学とどう関係するのだろうか?

 言語学の対象は「音韻」による言語が対象なはずだ。文字は後付けなのだ。

だからLLMは文字記号処理版の言語モデルであるというのが正しいのだろう。

つまり、chatGPTはため息や笑いは発しようもないのだ。顔文字は別名エモティコンというが情動からでる発声やサインは扱えないのではないか。

 

その三、LLMは言葉の出現確率を算出する予測モデルの一種だ。それを会話の間で更新ししながら、アドリブで文章が生成される。

 これは大脳がやっていることをうまくモデル化しているのかもしれない。

ライミング効果はLLMの定式化で確率頻度の更新の一種として説明できるだろう。心理的バイアスも説明可能なのではないだろうか。

 パラメータの数が1700億っていうchatGPT3の規模感は大脳言語野の神経細胞の結合の数に匹敵する。GPT4ではこの十倍だと言われている。

 だけどね、個人的にべき乗則で倍々ゲームでパラメータの数を増大させて高機能化するというのは、なんかいただけない話しだと思う。

 

その四、フレーム問題は解かれたか? デネットなどがAI論争で指摘していたような状況判断のビッグバンは免れているように思える。記号処理としての言語の範囲では、そうTOM(心の理論)も想定できるかもしれない。

 であるけれど重要な局面で妄想を抱かれるリスクがある。そもそも妄想がいかなる理由で生じるかもわからないときている。航空管制官にはなれそうもない。

 

【参考文献】

 

 

 数学に弱いGPT3というのが面白かった!

 

このテーマに格好の書籍があった。主題はアルゴリズムのバイアス。それを取り上げて最新の動向を教えてくれる。アメリカはAI実用化を先行させて様々な問題を引き起こしている。