サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

がん細胞と現代文明の対比

がん細胞もしくは悪性腫瘍が現代文明と似ている、というのは幾度も指摘されてきた。 もう今更の感も無きにしもあらずだが、2000年に『Cell』に載せられたバナハンとワインバーグ論文「がん細胞の特徴」から、やや深く細胞生態的かつ経済史的な類似性を追いか…

袖口がとくに汚れるのはなぜなの?

ワイシャツで襟とか袖口が汚れる。そこが集中的に黒くなってくるのはどうしてないだろうか? その汚れが皮膚からの分泌物や剥離物であるなら、皮膚からの分泌物は脇の下をのぞけば、全部共通のはずであり、袖口に集中するのは説明にならない。 自分の考えで…

がん細胞の特徴とその意味

21世紀の今日、がん研究は医薬品の研究費の最大の費目であり、おそらくは20世紀後半から人類の英知を傾けて集中的な原因の解明と治療法の開発を行ってきた。 その結果はどうなのか? 治療法の解明はほマズマズの前進を続けてきた。これは早期発見による治療…

強制的な存在切断は「歴史」を刻む

強制的に存在を切断された有機体は「歴史」を刻む。その意味するところを説明してみたい。 ポンペイの町並みや家屋、それに市民の亡骸は1000年の時を超えて、当時の有様を伝えてくれる。火砕流が彼らの生活を断ち切り、写真のように生痕遺物を残してくれたか…

サンゴの消滅からの随想

珊瑚礁を造り出したのはサンゴ虫だ。サンゴ虫は海水中の二酸化炭素から炭酸カルシウムをつくりだし、それを蓄積する。その何百万年の営為が珊瑚礁となる。 よく知られているようにサンゴの死滅が沖縄やグレート・バリア・リーフをはじめ世界中で拡大している…

スタニスワフ・レムの最期の一礼

このほど(2017年7月)国書刊行会のスタニスワフ・レム・コレクション全六巻が完結した。このポーランド人ほどの傑出したSF的知性の持ち主は多分、ただ一人H.G.ウエルズが比肩できるだけだろうと個人的に思う。ウェルズの後継者と目された科学万能主義的なA.…

地球を白く塗装して平均気温を下げる

「道路を白く塗装して平均気温を3度下げる」なるニュースを読んで太陽電池のことを心配したヒトがどれほどいるだろうか。 逆のことを心配する人はいなのであろうか? アルベドを考えれば太陽電池の昇温効果は一目瞭然だろう。 アルベドは入射エネルギーに対…

民族の記憶の変容

ヒトの記憶は「書類キャビネットに大切に保管された堅固なファイル」ではなく、「事実と空想の入り混じった創造的産物だ」と喝破したのは米国のエリザベス・ロフタス博士だ。 目撃証言がいかに変化してしまうか、周囲からの誘導尋問などで見ていなかったもの…

ギリシア科学の担い手 ネストリウス派キリスト教

十二世紀ルネサンス関連本を読んで興味を感じたのが、キリスト教の異端であるネストリウス派だ。紀元431年のエフェソス公会議で異端として断罪され、ビザンチン帝国(東ローマ帝国)から追放された。 はじめはエジプト、それからシリアのエデッサで拠点をつ…