2017-01-01から1年間の記事一覧
『鉱物』なる学芸文庫の12月新刊を読み終わったとこだ。この書籍、どうぶつ社の『宮沢賢治はなぜ石が好きになったのか』の復刊だとある。専門家の本としてはなかなか滋味豊かな書物だ。 そこに「モルダバイト」という特殊な天然ガラスの話が出ていた。チェ…
「不気味の谷現象」はヒューマノイドロボットの「より人間らしく作られるようになるにつれ、より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わる」(WIKI)という理論とも感性論ともなんともつかない学説である。森 政弘という一世代前のロ…
有機化合物の光学的非対称性について、最初の発見者はルイ・パスツールだった。左旋光の酒石酸の結晶と右旋光のそれを顕微鏡で選り分けて、偏光面が異なることを示した。それが19世紀。ビオーという物理学者が予言したのだが、そのビオーの目前で実験を行…
最近の見積もりでは微生物の数はおよそ5☓10^30 とされる。東洋風の表現でいえば、ざっと5百穣匹おるわけだ。これぞ細菌の見積もりだ。JAMTECの「地球」によるマントル掘削プロジェクトなど、幾つかの海面下数キロにおよぶ地球深部(といっても表面に近い…
系外惑星の発見数は数千個にはなっている。いわゆるハビタブル・ゾーンに属する地球型惑星も発見されている。にもかかわらず地球外文明の証拠はゼロのまんまだ。 そう。例のSETIの活動でも地球外文明の発信ケースはゼロだ。 この事実は「グレート・サイレン…
それは、アメリカのネバダ州で発見されたイガゴョウマツ(=ブリスルコーンパイン bristlecone pine)で、切って数えると年輪が4844個だった。そのまま生かしておけば、五〇〇〇年以上生きたかもしれないとされる。 ほんとに余計なお世話をしたもんだ。 …
幸田露伴翁の奇妙な味の短編『ねじくり博士』によれば、「ねじねじは宇宙の大法なり」となる。たしかに渦はいたるところにある。DNAで、風呂の栓で、台風の眼で、頭髪のつむじで、渦状銀河で、と変幻自在な現れ方をするのが「ねじくり」なのだ ねじくり博士…
テーマ別の歴史はほぼ思いつくかぎりのタイトルが出揃っているような気配がある。扱う対象も自動販売機や洗濯機、ラジオやコンビニ、デパートやら便器、下水道から硯、鏡や筆から茶道はてまた通信機器といった人工物だけではない。女らしさの歴史や化粧や服…
今年になってマダガスカル島でペストが流行している。10月25日付のNews「ペスト猛威のマダガスカル、死者が124人に増加」が流れているのを知り、我が目を疑った。 なぜなら、1980年にWHOが根絶宣言したはずではないか? どうもそれは記憶違いであった。根絶…
SONYが12年ぶりにロボット犬「aibo」を復活販売する。懐かしい限りだ。 12年間の半導体とアクチュエータ、それにソフトウェアの進歩を取り込んで、素直に進化した製品になっていることであろう。 新aiboでは22個の自由度を持つとされる。つまり、アクチュエ…
分子分光学を日本で発展させた藤岡由夫(1903-1976)に『妖気』(1939)なる「科学随筆」の一篇がある。その前半は藤岡の母親への中谷宇吉郎の見舞いの逸話から始まる。 母の病室を見舞って出て来た中谷君は「君のお母さんのこんどの病気はどうも心配だから、…
ナショジオでレポートされていた「村をのみ込む泥噴出、止まらない原因を解明」の場所をGoogle mapで調べてみた。Wikipediaでは「Sidoarjo mud flow」という記事が詳しい状況をレポートしている。 噴火から、もう11年も経過している。その昔、自分もそのドキ…
日本の地名が地質年代に入るかもしれない、その場所を訪れてみた(10月半ば)。房総丘陵の中ほどにあり、余程の好きものでない限り、アクセスしない土地にある。観光地などとはほど遠いのであります。 チバニアンというよりは「地球磁場逆転地層」でGoogle m…
10月14日付けNHKニュース『米カリフォルニア山火事 発生直後の映像公開』では、こんな記事が報じられている。 カリフォルニア州北部で8日発生した山火事は、ワインの産地として知られるソノマ郡やナパ郡などを中心に燃え広がっています。州当局によりますと…
レオナルド・ダ・ヴィンチは「天体の運動を足下の土よりよく知っている」と言ったそうですね。 天体の運動は幾何学的な情報だけで、その理解のためのモデルは比較的シンプルなのでしょう。そして、ニュートン力学が生まれ。素粒子を扱うための量子力学まで成…
ここ数年、閲読したなかでも日本語による認識の特徴について大いに開眼させてくれたのは、次の言説だった。 日本の元素名はかなり複雑な構造をもっている。水素・酸素・炭素など「素」の字のついた元素名のほかに、金・銀・銅・鉄のように(中国に倣った)漢…
ロシア人の精神はつくづく西洋とは異質なものと感じる。その代表はヴェルナツキイ(1863年-1944年)という地球化学の創始者の特異な思想だ。この人はソ連の代表的科学者であった。 晩年のヴェルナツキイ 宇宙精神の発露といってもいいその思想はコスモロジカ…
インドの科学者でBoseといえば、Bose-Einstein統計のBoseやラマンなどを思い出す。ここはもうひとりのBoseを書き出しておこう。ジャガディッシュ・チャンドラ・ボースは1858年に生まれ1937年に亡くなる。インドにおいてはつとに著名であり、イギリス留学の後…
がん細胞もしくは悪性腫瘍が現代文明と似ている、というのは幾度も指摘されてきた。 もう今更の感も無きにしもあらずだが、2000年に『Cell』に載せられたバナハンとワインバーグ論文「がん細胞の特徴」から、やや深く細胞生態的かつ経済史的な類似性を追いか…
ワイシャツで襟とか袖口が汚れる。そこが集中的に黒くなってくるのはどうしてないだろうか? その汚れが皮膚からの分泌物や剥離物であるなら、皮膚からの分泌物は脇の下をのぞけば、全部共通のはずであり、袖口に集中するのは説明にならない。 自分の考えで…
21世紀の今日、がん研究は医薬品の研究費の最大の費目であり、おそらくは20世紀後半から人類の英知を傾けて集中的な原因の解明と治療法の開発を行ってきた。 その結果はどうなのか? 治療法の解明はほマズマズの前進を続けてきた。これは早期発見による治療…
強制的に存在を切断された有機体は「歴史」を刻む。その意味するところを説明してみたい。 ポンペイの町並みや家屋、それに市民の亡骸は1000年の時を超えて、当時の有様を伝えてくれる。火砕流が彼らの生活を断ち切り、写真のように生痕遺物を残してくれたか…
珊瑚礁を造り出したのはサンゴ虫だ。サンゴ虫は海水中の二酸化炭素から炭酸カルシウムをつくりだし、それを蓄積する。その何百万年の営為が珊瑚礁となる。 よく知られているようにサンゴの死滅が沖縄やグレート・バリア・リーフをはじめ世界中で拡大している…
このほど(2017年7月)国書刊行会のスタニスワフ・レム・コレクション全六巻が完結した。このポーランド人ほどの傑出したSF的知性の持ち主は多分、ただ一人H.G.ウエルズが比肩できるだけだろうと個人的に思う。ウェルズの後継者と目された科学万能主義的なA.…
「道路を白く塗装して平均気温を3度下げる」なるニュースを読んで太陽電池のことを心配したヒトがどれほどいるだろうか。 逆のことを心配する人はいなのであろうか? アルベドを考えれば太陽電池の昇温効果は一目瞭然だろう。 アルベドは入射エネルギーに対…
ヒトの記憶は「書類キャビネットに大切に保管された堅固なファイル」ではなく、「事実と空想の入り混じった創造的産物だ」と喝破したのは米国のエリザベス・ロフタス博士だ。 目撃証言がいかに変化してしまうか、周囲からの誘導尋問などで見ていなかったもの…
十二世紀ルネサンス関連本を読んで興味を感じたのが、キリスト教の異端であるネストリウス派だ。紀元431年のエフェソス公会議で異端として断罪され、ビザンチン帝国(東ローマ帝国)から追放された。 はじめはエジプト、それからシリアのエデッサで拠点をつ…
中華人民共和国の最高の軍人といえば彭徳懐に指を折ることになろう。 写真は働き盛りの頃の彭徳懐である。毛沢東と親しく、その毛沢東が大長征に際して、詩でもって偉業を称えた数少ない将軍の一人だ。 山高く道遠く坑深し、 大軍縦横に疾駆す。 誰か敢えて…
21世紀になってからも基礎理論や先進的な研究は欧米から到来するのが科学技術の常態だ。それでも、かつて日本は極めて短時間に西洋列強に追いついた事績がある。第二次大戦後の経済成長などよりも、じつはそちらの歴史的事実のほうが世界史へ与えたインパク…
内戦や政治の腐敗などによって国家機能が喪失した国々を失敗国家(Failed state)または破綻国家と呼ぶ。 世界の国々における失敗国家の進行状況のレポートしているアメリカの「The Fund for Peace」というNGOのサイトだ。そのNPOで虎豹している数値化した年…