2016-01-01から1年間の記事一覧
単位というのはグローバリゼーションの走りではあるけれど、一部の偏屈な学者先生を除いては誰もその導入に反対はしていないようである。かつて東大工学部の内燃機関の先生にそうした名物教授がおりました。 それはともかく、単位のあるものは人名に由来して…
知らないでいたのだが、かなり多くの樹木の根は菌と共生している。マメ科の植物が菌類と共生して大気から窒素を吸収するのは有名だが、菌類と共生する樹木は多く、ブナ、オーク、マツなどはそうである。 根の一部となった菌糸を通じて、水分やリン酸などを吸…
人に説明しようとして失敗した経験があるのが、この進化論者の対決の争点だ。 なるほど二人とも知名度の高い進化論の擁護者であり、正統派の科学者たちである。ドーキンスは進化論の騎士ラーンスロット、グールドは進化論のプリンス・オットーに例えられよう…
冬場になると連日、お隣の中国ではPM2.5の警報が乱れ飛ぶ。北京、大連、上海など大都市圏は霧の都と化す。 それは1960年代の日本の工業都市を思わせる。たぶん、規模や濃度はそれ以上であろう。 20世紀中頃のイギリスでも「ロンドンスモッグ」(1952年)で10…
科学基礎論の覇者カール・ポパーと論理哲学の王ウィトゲンシュタイン。この伝説の男たちが対峙した一夜があった。その場にはイギリス貴族の末裔にして当時の哲学界の大審問官バードランド・ラッセルがいたとなると歴史上の単なるオモシロ・エピソードではな…
いくつかの柳田国男論を自分も読んでは見た。 読んではみたものの「群盲象を撫でる」の感は深まるばかりであった。それもそのはず、論者たちは時代の制約のせいで、「小者」になっているからであろう。明治の成長期に時代の重荷を背負って幾たびもの試練や国…
経済心理学者のカーネマンの逸話というのは、示唆的だ。 鬼軍曹のような教官が訓練生を叩き上げる方法はこうだ。 「訓練生がうまく操縦する、賞賛は良い結果をもたらさない」、そして「訓練生が下手に操縦する、教官は訓練生を大声で下等霊長類になぞらえる…
以前にも同様な比較をしたが物理学の20世紀の最初の16年間を振り返っておこう。ちょうど100年前の新世紀の始まりの16年で物理学上の革命が起きていた。まず、1900年(明治33年)のプランクの量子仮説は19世紀であったからここで触れてはいけないのだ。…
古代ギリシアの三大歴史家というと、歴史の父ヘロドトス、それにアテナイの興亡を光芒のうちに描き尽くしたツキジデスまでは名が知られている。しかしながら、3人目にポリュビオスを名指しできるヒトはそうとうに歴史に造詣が深いといえる。 ポリュビオスは…
仮に命題の真理値を計算できる汎用的な関数の存在を認めるとどんなことが言えるだろう? 真理値関数の入力は真偽を判断する命題、時間、場所、ヒト(判断主体)、それに文化とする。 ヒトと文化の変数は切り分けが難しい。 言語はどこに属するか?宗教はどう…
スウィフト流に言うなれば、人間の皮膚と異なりいかなるクローズアップにも耐えられるのが植物の実だ。
技術畑のリサーチで有名なガードナーグループは特定の技術の社会的受容のモデルとしてハイプ・サイク(Hype Cycle)を提唱している。 概ね、下図のような曲線を経由して先端技術は社会に浸透する。初期の過度な期待や脅威や予想を経て、disappointment(失望…
古代ギリシアのイオニア学派は事物の始原(アルケー)としての自然哲学を開始した。 諸子百家が沸いて出たようにその始原は諸説紛々であったが、ハイデガーが申立てしたように存在の棲家は古代の自然哲学者の言説にあったようだ。 原子論(アトミズム)はレ…
アスペルギルス属のオリゼというのが日本の麹菌の名称である。この菌は有毒であると20世紀初期には判定されていた。 中野政弘によるとこうなる。 チャールス・トムの『アスペルギルス属カビ類』という大冊な分類学書が一九二六年に発行され、世界中の菌類学…
生命の歴史上、もっとも古いと思われる化石がストロマトライトだ。細菌、というか藻に近い単細胞生物の集団であった。34億5千万年前のオーストリアのストロマトライトが知られている。 こうしてみると菌類というのは、人類を含むすべての生物の始祖はないか…
ロバート・F・ケネディの暗殺者はまだ生きている。 ロバート・ケネディは言わずと知れた元司法長官で、ケネディ大統領の弟であり、いまの駐日大使キャロライン・ケネディの叔父である。 1968年6月5日に事件は起きた。 暗殺者のサーハン・ベシャラ・サーハン…
『人間機械論』で名を残すラ・メトリーはフランスの医者であり思想家でもあった。 そうとうに愉快な人物であったらしく、啓蒙主義君主かつ軍事的独裁者でもあったフリードリヒ大王に大いに気に入られていた。 「ラ・メトリを手に入れたことを自分ながら大手…
日本最古の昆虫専門の博物館「名和昆虫博物館」の展示でシンメトリーを感じた。 世界の美蝶展示は、なかでも圧巻だ。 小粒ながら各所での工夫が光る。子供たちが多く来ていたのが印象的だった。 同館は1919年に開館して以来、今日まで続く。
ある会話で「レバノン杉は人類の浪費のせいで縮小した」と主張してみたが、論拠がどこにあったか曖昧なので探してみた。ついでに、その残存状況の調査を試みる。 レバノンの国旗の真ん中に描かれた樹木はレバノン杉であろう。学名はCedrus libani それほどま…
先週の『ブラタモリ』に啓発された。赤色立体地図はまことに裨益すること大だ。地形のダイナミックを手に取るように理解することができる。 発明者の千葉達朗(アジア航測)に脱帽する。貞観年間の富士山の大噴火は有史上最大の噴火とされるが、その正体がま…
なぜかスペインは大脳に関する有能な科学者を輩出する傾向にある。といっても二人ほどだが。一人は文句なしの偉大なラモン・イ・カハールであるが、そして、もうひとりはホセ・デルガードだ。 ESBは脳電気刺激のことであり、デルガードはリモコンで脳内に埋…
航空宇宙産業で成功した企業家が皮肉るアメリカの官僚主義ジョーク集。 第1の法則 「雌豚の耳で絹の財布を作ることはできない」と諺では言うが、まず絹の雌豚を作れば 可能になる。お金についてもまったく同じことが言える。 第2の法則 今日が明日の半分の…
アメリカのTVシリーズで大人向け時間SFものの最初の話題作はアーウィン・アレン監督の『タイムトンネル』 (The Time Tunnel) であろう。1968年から30作ほど放映された。 若き科学者トニー・ニューマンとダグ・フィリップスのタイムスリップものだが、途中で…
古代ギリシア文化に不可欠な地域は「マグナ・グラエキア」、大ギリシア地方と訳すのか、である。南イタリアなのだけど近代の南イタリアは、ナポリ以北にしか脚光を浴びることもなく、経済的には不毛なイメージを与える。 ギリシア文化史、哲学史ではパルメニ…
ケプラーが超一流の数理天文学者であったとしても、ケプラーの三法則はそれだけでは発見出来なかった。 一流の天体観測家であるティコ・ブラーエがいなければ、近代的な天文学は生じることがなかったかもしれない。 時代を超えた精密な観測結果がケプラーの…
グローバル・ヒストリーが静かなブームである。ウィリアム・マクニールやアナール学派の本、近代世界システムなどが注目されている。ピーター・バーグの浩瀚な知識社会学の本や認知心理学分野のスティーブ・ピンカーまでものが歴史ものを著している。 それは…
ある年から前の記憶や記録が吹っ飛んだとしたら、かなりのドタバタになるだろう。 西暦774年にそれが起きたわけではないのであるが、地球規模での宇宙線の強度が平均の20倍になったことが知られている。 「774–775 carbon-14 spike」と呼ばれるイベントは日…
作物に欠かせない元素は窒素とリンである。これらは肥料として常時農地に補給されている。肥料の三大要素はこれにカリウムを加えている。現在、リンの供給源であるリン鉱石の枯渇が懸念されているらしい。 窒素はこれまでも何度か言及したハーバー・ボッシュ…
世界に拡がる高等教育システムの原点としてギリシアの哲学者プラトンの創設した「アカデメイア」がある。ソクラテスとプラトンの教説はこの組織が紀元後、東ローマ帝国のユスティアヌス皇帝によって閉鎖を命ぜられるまで、伝え続けられた。 一部の学者によっ…
バリノマイシン(Valinomycin)がその答えらしい。抗生物質でもありSARSに有効である。 そのデブな化学式は見ものであります。 放線菌が産生する環状ペプチドであるバリノマイシンはK+と選択的に錯体形成し、そのK+対Na+選択性は10,000倍にも達するそうな。コ…