サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

万治の石仏

 諏訪にある「万治の石仏」はどうやら人気を呼んでいるらしい。
諏訪大社下社の門前に万治の石仏グッズの販売所まである。大社に参拝したヒトは「石仏(せきぶつ)さん」(地元の人はこう呼ぶ)にもお参りしているようだ。
むかしは、「浮島の阿弥陀さま」と呼ばれていた。整地される前は田んぼに囲まれて、もっと野のホトケ的なありさまだったようだ。
万治の石仏」と名の由来は、その刻銘にある。
「万治三年十一月一日 願主 明誉浄光 心誉慶春」
万治三年は1660年だ。願主の名前は確かに浄土宗系で、それゆえ「阿弥陀さま」だったのカナ。

 その造形はユーモラスであり、親しみを感じさせるとともに大地性がある。胴体はそばの砥川のゴロタ石だそうだ。
 まるで胴体は丸ごと地面から生えてきたようだ。イワクラといっても良い。それに何ともアンバランスな仏頭(モアイ像と似ている)が絶妙なバランスを保っている。
かの岡本太郎が手放しで褒めたのもうなずける。

 初めてその造作を知ったのは五来重の本だった。だが、諏訪周辺の石文化(石仏や道祖神など)をみてもやはり諏訪の伝統がこの造形に息づいている。どっしりとしたその大地性は近くの蓼科の国宝「縄文のビーナス」との秘かな関係すらあるようだ。

石の宗教 (講談社学術文庫)

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 作仏の聖という宗教伝道者の存在を通して謎の石仏を探る女性の書

謎の石仏―作仏聖の足跡 (角川選書)

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