サイエンスとサピエンス

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「心理歴史学」のハリ・セルダンとピーター・ターチン

 オールドなSFファンならアシモフの「銀河帝国」シリーズは通過儀礼として経験済みであろう。その未来的な科学者の理想であるのが、ハリ・セルダンである。

 彼は分子運動論にヒントをえた、心理歴史学により銀河帝国の未来図を描き出す。それにより、「セルダン危機」なるアナーキーな状態を低減/回避するための方策を世に残すのだ。

 始めて、このシリーズを読んだときのすばらしいという印象は、今も変わらない。

セルダンのようなスーパーなインテリジェントの登場を今でも密かに願っている。

 しかし、まあ、ここでは、後知恵の突っ込みを入れておこう。

 実は「分子運動論」をMaxwellを開拓したとき、すでにケトレという統計学者が社会への誤差曲線等の統計学の拡大適用を行っていた。ケトレにより誤差曲線(ベルカーブ)は社会の統一法則として、扱われていたのだ。科学史家によれば、分子運動論はその「成功」に刺激されたというように見なされている。

 アシモフ先生によるセルダンの心理歴史学の法則はその逆ばりであったわけだ。

 そんな些細なことどもを書こうと思い立ったのは、下記のピーター・ターチンの記事をたまたま目にしたからだ。

 

courrier.jp

 ということで、ターチンこそセルダンに近い学者なのかもしれない。

 彼の『国家興亡の方程式』なる快著を仕入れていたからだ。2003年の本である。国家の領土と人口に関する可能な限りの数学的なモデルを20年前にターチンは主唱していたのである。