サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

子どもと動物の間柄

 先ごろ、柳田国男の『孤猿随筆』が岩波文庫で再刊された。その序文では、いつものように柳田翁は身近な話題から、テーマの由来を語りだしている。

何度か幼い者に就いて試みたことであるが、彼等が獣の諸に興味をもつのは殆と天性に近いものが有るやうである。

出だしがこうである。幼児が動物によせる興味は大人のそれどころではない。

自分だけはこの小児が獣の話を愛する癖を、狩小屋以前からの遺物かと思って居る

 動物は大むかし、人の住まいの近くに生きていたし、人も動物の気配を感じながら、その生に依存していた時期の名残りを柳田翁は嗅ぎつけているのだろう。
この随筆もそういった論考を集めている。

 近頃、流行りの「進化心理学」でも似たことを指摘しているのに出会った。
原始狩猟生活の痕跡を子どもの心理に求めているのである。狩猟において動物の心を読む能力が不可欠なものであり、未開民族の動物を描く壁画や動物霊をともらう祭儀にも現れているとスティーブン・ミズンは『心の先史時代』で説いた。
なぜ、こどもに残存するのか、どのように伝わるかまでを検証していないし、また、検証しようもないことだが、
動物園での子どもたちの歓喜を目の当たりにするたびに、思い出すのであります。


孤猿随筆 (岩波文庫)

孤猿随筆 (岩波文庫)

心の先史時代

心の先史時代