サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

イノベーションの一要因としての大震災

 戦後、日本の復興は世界中から驚異の念をもって受け止められた。東洋の奇跡とまで称されたその経済的発展は、ある意味、戦争による徹底的な破壊の賜物であったと言える。
...などというと、何を馬鹿なことをとの叱責があろう。
 ブライアン・アーサーのイノベーション学説の帰結として、インフラと国家の建て替えにはこれほど効果的な、しかし非人道的なやり方はないということは示せるはずだ。
 例をあげる。
 ロンドンの地下鉄は20世紀前半にトンネル規格が決まり広範囲で運行していた。
車両の大きさはエアコンがない時代に決められたため、地下鉄車両内は熱気をコントロールできないでいる。
 部分的な技術改良はどこかで遅滞していく。本来的なイノベーションは技術的なネットワークであり、システムごと組み換えなくてはならない。硬直的な伝統や仕組みは阻害要因となる。
 「創造的破壊」とはシュンペーターが、イノベーションの研究に伴ってもともと言い出した。しかし、その実証的な研究はサンタフェ研究所に引き継がれたわけだ。

 今回の東日本大震災は、その契機となりうるのだ。東日本のインフラをより優れたものとする絶好の機会であり、新しい産業を創出する好機であるのだ。農業においては企業化、大規模化、さらにはIT化などの試みが着手されている。日本の一次産業を根底から再構築することができるのだ。

 天災は災いだけでなく、再生の道筋をうみだす。何も天災のない土地はひたすら古びてゆく朽ちゆくが、どうしたわけかこの弧状列島はスクラップ&ビルドする風土が定住する民を活性化するようなのだ。

テクノロジーとイノベーション―― 進化/生成の理論

テクノロジーとイノベーション―― 進化/生成の理論