サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

人のライフサイクルと重心の高さ

 オイディプス王の解いたスフィンクスの謎は、こんな問いであった。
「朝には4つ足、昼には2本足、夕には三本足で歩くものは何か」
言うまでもなく「人間」である。
 これを人体の重心という観点で総括すれば、生まれた頃は寝てばかりいるので、最低レベルの高さにある。やがて、お座りし、はいはいをすると中レベルまで持ち上がる。つかまり立ちをすれば、ほぼ二足歩行と同じで高い状態に重心が移行することになろう。
 受精卵から始めたいという研究熱心な人もいるだろうが、その重心はほぼ腰の高さということなろう。新生児になりて生まれ落ちると地表面に落下することなるのだ。これもパラダイス・ロストの一種であろう。

 人体重心は平均値を考えることを留意している。人は寝たり起きたりと24時間サイクルで重心は昇降を繰り返している。その平均高さをみれば、壮年期まではフラットな高さを維持することとなろう。
 老年期ともなると前傾姿勢になり重心は低下し始める。やがて杖をつく。三本足状態。さらには車いす状態が続き、寝たきりになるまで、重心は低下傾向を続ける。
 もともと人体の重心は、へその位置にあるとされている。ペアのフィギュアスケートで男性が女性を片手で支えるシーンがあるが、その支えるポイントが重心付近である。

 臨終時には寝たママで往くのが普通なので、重心レベルは低い。もっとも禅僧では座したまま遷化というケースもあるので、お座り重心と同じだ。
 弁慶のように立ち往生というものある。有名なケースではローマ皇帝ウェスパシアヌス帝である。人類はようやく二足歩行まで上り詰めたのだから、立ったまま死ぬのも見識ではあるが。

 ソフォクレスの作品はギリシア悲劇中の最高傑作という。

オイディプス王 (岩波文庫)

オイディプス王 (岩波文庫)

 死後の身体を考えれば、土葬であれば、地表下まで重心は低下するという考え方もある。火葬すると(燃焼した分子まで全部含めれば)重心はかなり上方に移動する。舎利だけで重心をみれば地表近くにとどまる。そんな考察はこの本にはないけどね。

日本往生術―死に方の精神誌

日本往生術―死に方の精神誌

 ローマ皇帝のほうが中国の皇帝よりは人間性あるように思う。とくに名君は愉快な奴らが多い。

ローマ皇帝伝 上 (岩波文庫 青 440-1)

ローマ皇帝伝 上 (岩波文庫 青 440-1)

ローマ皇帝伝 下 (岩波文庫 青 440-2)

ローマ皇帝伝 下 (岩波文庫 青 440-2)

 二足歩行までの歩みというを知ることは人類のお務めである。ペンギンをどう扱うは今後検討する。

直立歩行―進化への鍵

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