技術畑のリサーチで有名なガードナーグループは特定の技術の社会的受容のモデルとしてハイプ・サイク(Hype Cycle)を提唱している。
概ね、下図のような曲線を経由して先端技術は社会に浸透する。初期の過度な期待や脅威や予想を経て、disappointment(失望)が広がり、やがて然るべき居場所(ニッチというべきか)を見い出しゆく。
近頃、はやりの人工知能(AI)への期待は今や絶頂に到達せんばかりといえよう。それ故に、星印のあたりにいるかと思っていたところだ。
しかるに、「人工知能「東ロボくん」 東大を断念」というニュースが目を引いた。どうやら長文読解が困難なのだ。これはチューリングテストで不合格となることを意味するように思える。
早くも人工知能の限界の一端が垣間見えた、かのようだ。NHKによれば、その限界はこうだ。
「こんなに暑いのに歩いたの!」という問いかけに対し、「はい。とてものどが乾いた。だから」に続く文章を選ぶさいに「寒いので何か飲みたい」といった間違った解答を選んでしまうのです。
通常、人間であれば「暑いのだから冷たいものが飲みたいだろう」と状況を理解し、当然、「冷たいものが飲みたい」と解答します。しかし、暑いとは何か、暑いと何が飲みたいのか、という知識は教科書に記載されていません。
つまり、人間の身体知や情緒をもとにした長文読解ができないのだそうだ。これはいわゆる「モラベックのパラドックス」にかなり似ている。
モラベックのパラドックスでは感覚運動スキルに計算リソースが必要であるとするものだが、東ロボくんは暗黙知(情緒反応)という壁にぶつかってしまったようだ。ただし、人工知能研究者はとうの昔に知っているのだけれども。
それはともかく、人工知能はハイプサイクルの折り返し点に早くも到達しているのかもしれませんな。
ちなみに、ハイプ・サイクルの当てはまり例はいくつかある。
大物事例を2つほど。ナノテクノロジーやバイオテクノロジーだ。この2つにおいてハイプ・サイクルの理念的な正しさが立証されたといえる。人工知能もそうなるのだろうか?
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自分の知っている検証本を参考資料として挙げておく。
- 作者: D・M・ベルーベ,五島綾子,熊井ひろ美
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タイトルからは不明だろうが副題は「バイオ産業失敗の本質」だ。
- 作者: ゲイリー・P・ピサノ,池村千秋
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