サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

四次元空間の学者の閨閥覚え書き

 明治政府のお雇い教師の一人だった数学者ヒントンが四次元に関して後世に残る啓蒙書をものしているのはわりと有名だ。四次元幾何空間を論じた本には必ず引用される古典といっていい。
 彼の本は国書刊行会のバベルの図書館シリーズボルヘスの推奨書籍)で読める。

 実はヒントンの嫁さんというのが、かのジョージ・ブールの長女なのだ。
ブール代数のブールだ。数学者の娘は数学者に嫁ぐらしい。
 伝統的な幾何学者の最後の代表であるコクセターとの交差点にブールの三女アリシアが登場する。アリシア・ブール・ストットはカナダの数学者コクセターの精神的盟友であっただけでなく、4次元における6個の多胞体を発見している。どうも彼女は高次元の幾何学的対象を視覚化する能力にいちじるしく長けていたらしい(スゴイ!!)

で、その関係は意外な方向に続く。
 ボイニッチの妻もブールと関係があるのだ。この嫁さんはブールの末娘、エセルだ。
 彼女にも天性の才があったらしい。
その証拠に、彼女には旧共産圏で非常な人気のあった小説がある。「あぶ」だ。
 どんでん返し連続のシドニー・シェルダン的な小説のはしりだ。
この小説は確かに読み応えがある。ぜひ再評価してほしいものだ。

科学的ロマンス集 (バベルの図書館 25)

科学的ロマンス集 (バベルの図書館 25)

あぶ (1981年) (講談社文庫)

あぶ (1981年) (講談社文庫)

 エセル相手のポーランド人化学者ボイニッチとは、かの秘伝中の秘伝、謎の暗号文書「ボイニッチ写本」のボイニッチだ(人類救済の書だという下馬評もあるらしい)。
 日経サイエンス(2004年10月号)の論文でボイニッチ写本の謎の解明状況を最近、読んだばかりの方もいよう。そのデジタル版は誰でもアクセスできるものとなっている。だが、この科学誌の論文は面妖なものだ。ボイニッチ写本が作り物らしいと判じた後に、自分たちの開発したその判別法の方法論はアルツハイマーの解明にも役立つと言っているのだから。

G.ラグ「ヴォイニッチ手稿の謎」
http://www.nikkei-science.com/item.php?did=55410

世界の奇書・総解説 (総解説シリーズ)

世界の奇書・総解説 (総解説シリーズ)

こちらは専門家はだしのSTUDYをしている
http://www.voynich.com/