第二次大戦の後遺症とも言えるメラネシアの「カーゴカルト」は文化汚染の最たるものだが、他方非常に興味深い信仰でもある。
ニューギニアで英米の連合軍が繰り広げた物資の空輸が、原住民にどのように映じたか。あの世からの豊富な食糧の降臨にみえたのだ。これが原住民自らのにも起き得ないはずがない。自分らの先祖の霊が願いを叶えてくれるはずだ。
天から贈りものを受け入れる祭壇としての、「エアポート」と「エアクラフト」と読替えを行い、延々と贈りものが空から届くのを待つ。
ところで、個人的な感想を言わせてもらえれば、二番目の映像(これホンモノなん?)の模擬的なエアクラフトらしき作り物と尾根沿いの「滑走路」らしきもの、それに二階建ての「管制塔」もどきが、とても好きだ。
コソボ紛争のときに「現代のカーゴカルト」が発生してことも忘れないように書き留めておく。NATO軍の圧倒的な空軍力をまえにミロシェビッチ政権側は、その軍事基地に
戦闘機などのハリボテを大量に、これみよがしに並べたのである。NATO軍爆撃機はとうぜん、空からのプレゼントとして爆弾を投下した。
なんともやる瀬ない似非カーゴカルトではあるけれど、負のカーゴを招き寄せるのには成功したのだ。
千年王国と未開社会―メラネシアのカーゴ・カルト運動 (1981年) (文化人類学叢書)
- 作者: ピーター・ワースレイ,吉田正紀
- 出版社/メーカー: 紀伊国屋書店
- 発売日: 1981/02
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