サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

有人宇宙旅行からの撤収のお勧め

 有人宇宙旅行から撤収すべきだと思うのは私だけであろうか? 
 早くはルイス・マンフォードが批判的に描いているように宇宙船の中の生活は胎児のそれに似ているが、それ以上に非人間的な境遇を強いられる。しかもなお、そのために膨大なエネルギーとコストが費やされる。女性宇宙飛行士に何十億円を投じるような余裕はもはやないのだと思う。*1
 海外諸国はともかく日本は無人宇宙飛行の技術開発に専念すべきである。それが国と日本人への使命だと思う。「ハヤブサ」の快挙がそれを実証したではないか。とりわけ下記のブログにて主張したように、日本はロボット技術に集中すべきである。
http://d.hatena.ne.jp/Hyperion64/20110404#1301922195

 NASAの専門家がそれを裏付けている。ジョーン・ヴァーニカスの『宇宙飛行士は早く老ける?』がそのファクトを能弁に知らしめてくれる。
重力の微小な環境でどれほど筋力がはやく失われてゆくか、骨からカルシウムが流れだし、平衡感覚に異常が生じる。ジョーン・ヴァーニカスが宇宙飛行士と比較しているのは、高齢者と長期寝たきりボランティアであるのが、その衰退した身体状態を物語る。
 宇宙では腸の動きは悪くなり、脂肪が増え、ついでにウツになりやすくなる。
これだけの状況証拠があり、なおかつ大気とバンアレン帯の防護がない環境で容赦のない宇宙線と電磁波を浴び続けるわけであるから、どう贔屓目にとっても健康によい場所とは言えないだろう。
 つまりは、有人宇宙飛行を続けるにはより重装備で安全な乗り物を開発しなければならないことを意味する。開発と運用コストが際限なく肥大化するわけだ。それは、他国に任せるにこしたことはない。日本は得意分野の無人宇宙飛行に邁進すべきだ。

宇宙飛行士は早く老ける?―重力と老化の意外な関係 (朝日選書)

宇宙飛行士は早く老ける?―重力と老化の意外な関係 (朝日選書)

マンフォードの予言的な思索書

人間―過去・現在・未来〈上〉 (岩波新書)

人間―過去・現在・未来〈上〉 (岩波新書)

 SFファンとしては誠に残念至極だが、人類が太陽系外進出するのは技術的にも経済的も無理なことがここ数十年で明らかになった。アポロ11以来の停滞時期が痛い。

*1:女性蔑視というなかれ。非自然的な宇宙環境はとりわけ女性に不向きだと思うだけだ。まして宇宙では小皺が増えるのだ