例えば、宮城県、千葉県、茨城県、高知県の一部では海洋に対して、大きなくぼみとなっている。こうした土地は海洋に削り取られてこのような形状になっているのではないだろうか? 削り取られるとは単なる侵食ではなく、太平洋トラフに引きずり込まれて沈降してゆくことを意味する。 それに対して、岩手県や福島県は海洋側に凸となっている。津波はここも襲った。だが地盤が強固で削られにくい土地柄なのだろう。
869年の貞観地震でも宮城を津波が襲っていることを考え合わせると、こうした土地は他の場所に先がけて、海中に沈みつつあるのではなかろうか。もちろん何万年かをかけてではあるが。
原因は異なるけれども、縄文海進も連想される。縄文時代には気温があがり、海岸線は今よりも内陸に入り込んでいた。陸地の沈下と海進が組み合わさると小松左京『日本沈没』とまではいかずとも、平野部は水びたしになる。
列島の地図をジックリ見つめていただきたい。
日本列島には次第にえぐられてゆく特有な場所があるのではなのではないか。もちらん、いきなりではない。気がつかないうちにゆっくりとだ。現に、有史以来それほど沈下を日本人は経験していないのだ。数万年単位で徐々に侵食されるか、今次の震災のように沈下と津波がいっきょに襲うかだ。ただ、今回のようなケースは稀だと考えて良いだろう。
太平洋プレートは列島を緩慢にマントル下降流に引きずりこもうとしているので、大きな間違いではないであろう。本論は場所によってその沈降の速さに差があるといっているだけだ。それが大きく湾曲した地形にみえていると。宮城県、千葉県、茨城県、高知県の湾曲部に共通な点が、まだ、ある。島がないことである。*1
たとえば茨城沖には離島がない。これは島があったとしても、既に沈下してしまったことを示唆している。
もう一つ、本土地図から興味深いことが浮かぶ。東北地方において宮城県はくびれているのである。周辺地域で緯度方向に最も「narrow=狭い」地帯であり、そこが津波の大きな猛威にさらされた(図中の横線)。偶然の一致かもしれないが指摘する価値はあるだろう。