超心理学は未だ科学となれずにいる。
デューク大学のJ.B.ラインはその創始者だった。客観的な観察と統計を駆使したその方法は、自然科学のそれだった。
ラインの面影と方法を伝える昔の映像だ。ややプロパガンダ風ではあるが。
いくら「実験結果」を重ねても、「超心理学」は科学のママ子扱いであった。マーチン・ガードナーやジェームズ・ランディらのサイコップはその論理的不備をついて攻撃をやめなかった。
だが、超感覚的知覚(ESP)ということ自体がどうも自然科学の基盤と背反するのだ。
因果関係をはずれた物理的な遠隔作用は自然科学の根底と矛盾する。それをいうなら重力子を発見できないでいる一般相対論もおなじかもしれないのだ。重力は遠隔作用そのものだから。その魔術的性質にニュートンも悩んだくらいなのだ。*1
因果関係を外れるとは、時間的な空間的な情報の伝達の流れを無視するという意味と考えておこう。全くの情報やヒント無しにカードの裏を見なくとも分かるとか、ドアの向こうに何があるか知っているということだ。
いくらESPを裏付ける観測事実があったとしても他の自然科学の原理からみると「異端」なのであろう。メタ論理的な前提からして相容れないのだ。通常の心理学(知能指数とか架空因子を統計で計測するなど)を批判しないで、超心理学だけをあげつらうのも片手落ちのような気がする。心理検査と統計的検定はマーチン・ガードナーの批判が全部当てはまるだろうから。
それに「分かる」とか「知っている」とかってそもそも何かが分かんのだ。
最後に、ライン自身はきわめて真摯な科学者だったことは、この途方もなく退屈な著作から体感できる。科学としての門構えを保つために、超自然的な駄言や余計な憶測を排除した結果だろう。
- 作者: J.B.ライン,J.G.プラット,湯浅泰雄
- 出版社/メーカー: 宗教心理学研究所出版部
- 発売日: 1976/05
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*1:にもかかわらず、一般相対論は多くの多方面での観測結果から検証されて、不動の地位にある。