サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

他者認知と脳科学の進歩

 NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」は、いろいろと面白いことを連想させた。
脳の深部を電磁波で刺激するTSMは、つい数年前まで認識能力を探るために実験されていた。かなり危ない刺激かと思いきや、欝を引き起こす脳の部位を抑制する効果があるという。
 その部位とはDLPFCという前頭葉の一部だそうだ。それが扁桃体につながり、うつ状態を支配している扁桃体を押さえつけるというわけ。

 認知行動療法は対面カウンセリングだ。この認知行動療法も「ことば」という伝統的な道具で前頭葉に働きかけるという。それが脳における効果が光トモグラフィで「見える化」されたことが、これまでのやり方との最大の違いだ。

 概要はそんなことだけども、連想したのはこんなことだ。
 人に語りかけるとき、田中さんや鈴木さんというまとまりをもった人格に語りかけるのではなくて、大脳の前頭葉の側方部位に語りかける。そのほうが、目的に合致することがあるのではないか。嫌がることに無理やり説得できたりするかもしれない。
 喜ばせようとするならDLPFCを刺激するような話し方がいいかもしれない。脳は細かく分けられている。24野に向けて話しかければ、この契約は成立しやすくなる、とか。口説くには18野をおとせばいい、とか。
 人を見て話すのではなく、脳の部位を想定して話したり、刺激したりする「対脳コミュニケーション」が生まれたりするのではないか。

はじめての認知療法 (講談社現代新書)

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