サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

最も宇宙を舞台にしてほしくない小説

 銀河とか宇宙とかを想像をそそるようなワードを含んだタイトルであるが、絶対書いてほしくないSF小説のテーマはなんだろうか、とかりに問いかけた場合、自分が最初に思い浮かべるのは、こんなタイトルだ。

 サラリーマンのオジサンたちが集う、新宿のションベン横丁みたいなところでのへべれけ話をネタにした、「アンドロメダ・ションベン横丁奇話」。
 アンドロメダ星雲にションベンなんていう取り合わせが、初めから破綻している。
 これは、A.C.クラークの『白鹿亭奇譚』のような洒落た飲み話ものとかけ離れたことは請け合える。クラークの作品は同じ飲み屋のネタでもイングランドのパブだから許せるし、英国人の酔っぱらいの話題ならSFに誂向きのものであることは確実だろう。オヤジサラリーマンの話題はどうもSFにはなり難い。

 「冥王星楢山節考」なぞというのも許されないタイトルであろう。
 だいたい、老いぼれたちを冥王星などという遠方に届ける経済力があれば、姨捨山など不要だ。21世紀以降の近未来、老人たちがラディカルになって反社会的なる可能性はある。そうした老いぼれたちが、アステロイド帯より内側に置いておくと危険であれば、冥王星まで捨てに行くのもありうるだろうが、そうまでしてこの奇異な題名にこだわる必然性はない。

 「大宇宙の養豚場」は、これまたクラークの「海底牧場」の向こうを張ったお題だが、SFファンなら必ずソッポを向くことが保証されている。それどころか、まともな性格の持ち主がこの小説を手にとることさえ想像できない。
 さりながら、あのユーモアSFの名手ロン・グーラートやロバート・シェクリーなら宇宙の家畜養育問題には手をつけていることもありうる。だが、まともな書き手だったら避けて通るような内容であるのはお察しの通りである。

 太宰治ばりの「生物失格」というのは、あるいは筒井康隆の創作メモの残りカスとしてなら存在する余地があるだろう。だからこのままでは面白く無い。せめて「タンパク質失格」とか「ハドロンにも嫌われる存在」とか、それをひねって「実在、イチやめーた」くらいまで飛躍しないと残りカスとしても認めてもらえないだろう。
 だが、このお題で何が書けるだろうか?

 玄人筋の浅倉久志がえり好みしたユーモアsfがありましたね。

 古典的なところで数冊を。

海底牧場 (ハヤカワ文庫SF)

海底牧場 (ハヤカワ文庫SF)

白鹿亭綺譚 (ハヤカワ文庫 SF 404)

白鹿亭綺譚 (ハヤカワ文庫 SF 404)

人間の手がまだ触れない (ハヤカワ文庫SF)

人間の手がまだ触れない (ハヤカワ文庫SF)