NASAの科学者によれば今年は過去最高の平均気温の年になるであろうとの有り難い仰せ。それはもうごもっとも言うことしかできない。この警告を待つまでもなく、すでに、オーストラリアは40度を超える酷暑に見舞われている。昨年暮れにグリーンランドのイルリサット氷河が最大級の崩落を起こしてもいる。
例によって、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)、つまり、IPCCの御託宣によれば今世紀末までにの平均気温上昇は1.1℃∼6.4℃なのだそうだが、その予測を上回る勢いで平均気温が伸びている。
間違いなく地球温暖化へ拍車がかかった状態なのだ。あと80年経てば6.4度なので十分に時間の余裕があるから平気の平左だいと高をくくれない事態ではないか。
カオスという現象を発見したのは気象力学者のローレンツであるけれど、そもそも地球大気圏はノンリニア(非線形)なシステムであると見なせる。言い換えると1だけ熱を投入したらば、「1」になるどころではなく「10」になったり「−3」になったりする不可思議な振る舞いを示す不規則なシステムなのだ。気温30度は40度になったり、マイナス10度になったりするということだ。
これははじめて起きる事態ではないことを注意しておく。
古気象学者たちはその実例を過去から掘り起こしている。ダンスガード・オシュガーサイクルという物々しい名前までつけている。間氷期に数十年間で数度の急激な温暖化が起きた(人類のせいでなしに)のだそうだ。
その後に、ヤンガードリアスイベントという寒冷化も起きた。その戻りで数年で7度上昇したこともある。
過去に起きたのなら今回も起きうるのだろう。今後数年で7度上昇か、−10度低下かもしれない。単純な温暖化ではなく、予測不能なアノマリーがこれから待ち受けているのだ。そうだと知れても、なんの救いにもならないが、そう考えておいて間違いはない。
人類が引き金になった今回の気候の不規則変動は、そうした目まぐるしい大変動となるやもしれない。まことに前途有望な怪物というわけだ。
「もう始まっているからね」
今、オーストラリアが暑い。50度もありか?
2012年 過去最大級、巨大な氷河の崩壊(グリーンランド イルリサット氷河)
要領の良い過去の変動の解説本。この手のノンフィクションは欧米系ライターが得意なのだが、この本、日本人が著者とは思えぬほどの出来栄えだと思う。
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