ビットコインが社会問題になっている。しかし、多くの人びとの銀行貯金の金額は、ほぼコンピュータ上のビットの列でしかないのは隠された真実だろう。貨幣はもはや信用を伴う情報の一種でしかない。
量子力学の情報科学的な研究は最先端研究の一翼を担っている。すべては情報に還元できるという見方も有力になりつつある。ある説によれば、この宇宙の全情報量は10^70ビットなのだそうだ。
だが、そもそも、「情報」とは物理量なのだろうか?
ビットの単位で計測できるのだからそれは物理量であり、物理量は実在するという立場もあろう。だが、エントロピーは計測できるが、実在するだろうか。フォノンはどうだろう?
超電導をもたらすクーパー対はどうなのだろうか?
ビットも自然や人工物の記述モデルの用語の一つといえるのではないかと思う。
モデルと物理的実在とは、かなり異なるようなのだ。ビットも仮想的な記号、それもエントロピーと双対性があるような認識論的な量としておこう。
メートルは認識論的な量だが、それは延長という実在の一次性質が対応している。ビットは実在(空間や物質)の一次性質というわけではない(ロックの用語でしか語れないのがモドカシイ)
そうは言いながらも、ビットは現代文明を席捲している。情報科学や自然科学的な概念や理論だけでなく、経済も社会もビットなしでは成立しないし、ビットで計量できる活動に包含されつつある(信用できる情報はまだまだアナログなのかもしれないが。例:印鑑やサイン)
こうした情報論的転換はシャノンがその幕開けをもたらした。
実はこの巨人は情報理論の成立において、重要な捨象を行った。「意味」を情報から取り去ったのだ。
ベル研のシャノンが創始した情報論に物理的な実在性を付与したのが、IBM研究所のランダウアーとベネットであろう。
ランダウアーは『情報は必然的に物理的である』という論文で、不可逆計算がエントロピーを増大させるとし、ベネットはその弟子として、それを具体的にこう定式化した。
情報が「消去」される時だけ、熱が発生する。
ビットが消されると熱になるのだ。
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