インド洋に浮かぶ神々のネックレスのような島嶼、それがモルディブだ。1200もの島からなり、その多くは珊瑚礁に囲まれている。洋上のコテージからはコバルトブルーの海が視野いっぱいに拡がる。年間100万人の海外観光客を呼び寄せる超人気リゾートとなっている。
おかげで国民一人あたりのGDPも南アジア最大であるとされる。
しかしながら、温暖化の影響はこの海面すれすれ(多くは海抜1m以下)の国をじわじわと締め付けつつある。インド洋大地震の津波の被害もひどかった。有人島150のうち57の島が深刻なインフラ被害を受け、14の島で住民避難が必要になった。21のリゾート島が閉鎖されたともいう。
人口増大や海面上昇へは無策ではない。人工島を建設中なのだ。首都マレの北側にはフルマール島(海抜3m)を建設中だ。この海抜は国内最高峰の山よりも高い。デザイナーズ・アイランドというらしい。
珊瑚礁を乗っ取るように有人島が形成されているのがモルディブの特徴である。
首都マレはさながら洋上都市だ。世界一の人口密度を誇る。この島を1990年の日本ODAで建設された防波堤が囲んでいる。
一般の旅行客からは隔離された島も多い。その暗部の一つがゴミ島のティラフシ島。かつての東京湾の夢の島だ。島内には煙霧がたちこめている。有毒性の廃棄物もなんでもござれ、いわば国中で不法投棄をしているような場所だ。
政府は観光客のゴミを無分別回収してここに捨てるだけだ。
モルディブのような洋上の楽園はクローズドスペースなのだから、観光客とはいえ、注意深い行動が求められるわけである。
その珊瑚礁はいたるところで白化しつつある。海洋温暖化と酸性化に加え人々の経済生活のために新色が進むモルディブの珊瑚礁。予測によれば世界の海で生きている珊瑚は2050年には無くなるとか。
消滅観光資源だけのモルディブはこれからの珊瑚礁死滅の時代をどうすれば生き残れるのか。
【参考資料】
2010年台における地球規模の環境問題とそれ対する解決に向けて挑戦する各地の人びとをルポする。モルディブの政治状況と環境施策はこの本によった。彼女の指摘したように、たった千年程度だが地表の深い傷痕としてアントロポセン=人新世が地層に残るわけだ。
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サンゴが海水の二酸化炭素を除去する仕組みを詳説している本。文明の排出する炭酸ガスを海洋が吸収していたのだが、その影の力持ちがいなくなりつつあるわけですな。
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人気リゾートのモルディブに行くのは今のうちかもしれない。おおよそ50万円の予算だという。
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