2020年11月21日(土)のテレビ東京のアド街ック天国では埼玉県本庄であった。
驚いたことに、堂々2位に輝いたのは「塙保己一(はなわほきいち)」であった。
塙 保己一は篤学の国学者であり、盲目でありながら、その実力を江戸幕府に認めらた。過去の貴重な古資料を集大成した『群書類従』『続群書類従』を編纂する。
まさしく記憶の人であった。
本庄市にはその資料館があり、生家があるのだけれど、それを番組が評価したわけであります。彼の伝記として、お薦めは森銑三のものであろう。同じくの書物の人であり、近代の書誌学の大家である。その著作集 第7巻 (人物篇 7)は塙保己一の伝を含む。
大きな図書館にはあるだろう。
また、『群書類従』の版木を保存した史料館は東京都渋谷にある。あのヘレン・ケラー女史も訪れたという。自分も訪問して版木の山を見せていただいた。
まことに貴重な遺産であります。
なんにせよ、この人物は一代の大学者であろう。
興味深いのは江戸時代には視覚障碍者たちの活躍の場を与える検校という制度があったことだ。その源流には琵琶法師などの芸能が中世以降に民間にあった。平家物語などの長大な物語を音曲として、謡っていたので、記憶力は鍛えれていたのだろう。
近代になると作曲家で琴の名人である宮城道雄が登場する。あの『春の海』の作曲家であります。そう日本を象徴するような名曲だ。
しかし、その随筆集『春の海』も独自の味わいがある。視覚障碍者の感じ取った自然、日本の四季というのが、たくみに文章に表現されている。ヘレンケラー女史との接点もその中に書かれていた。
最近では、辻井伸行氏の活躍ぶりは瞠目に値する。いくつもの難解な曲を暗譜し、オーケストラと協演している。その技能もさることながら、集中と努力の結実を実感させるのだろう。
BBCでのラフマニノフの二番は耳の肥えたヨーロッパの聴衆にも感銘を与えているのがわかる。
Rachmaninoff: Piano Concerto no.2 op.18 Nobuyuki Tsujii blind pianist BBC proms
カプスーチンの難曲を演奏するこのシーンは凝縮された集中力の結晶だといえる。
Nobuyuki Tsujii plays Kapustin's Concert Etude no. 1
伝統という観点では、宮城道雄も辻井伸行氏 もいってみれば、琵琶法師の偉大なる後裔と考えられなくもない。
視覚障碍者の努力と研鑽の歴史は、今の日本でも引き継がれていると思うのだ。
【参考文献】
聴覚と触覚からの描写は新鮮で刺激的ですらあります。
琵琶法師は今日でも姿をかえて活動している。また、昭和時代には文字通りの琵琶法師たちがいて、平家物語を語っていたというのはこの本で知った。