サイエンスとサピエンス

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「自殺率」と「がん死亡率」から探る「不幸でない」県

 不幸なこの世の去り方の代表格である「自殺」となるたけ避けたい病死の一番、されど死因一番である「がん」。両者へのマイナスな進路を避けるための一つの方針として、それが起きる率が少ない土地=都道府県に暮らすという選択肢があると思います。
 両者の発生率が少ない都道府県をかりに「不幸でない」県としましょう。
 2009年の発表の統計情報があります。両者とも10万人あたりの年間発生数を都道府県別に集計した公表値です。
 全国平均=1として、47都道府県をプロットしたものが、下図です。

 横軸が自殺比(県別発生数/全国発生数)、縦軸はガン死因比(県別発生数/全国発生数)です。やや両者のあいだに弱い相関があることを「白い直線」が示してます。

 上記の図中、左下の位置するのが2009年の「不幸でない」県です。13県です。

千葉、神奈川、石川、静岡、愛知、三重、滋賀、京都、奈良、岡山、広島、徳島、香川

 皆さんの感じる「住みやすそうな地域」というイメージと一致するでしょうか?
 いずれの土地も気候がそれほど厳しくなく、経済的には比較的に恵まれた土地柄ではないかと思われます。
 そのなかでも、両方の数値が0.8台なのが香川県なのです。左隅にある点です。
 がん遺伝子発現を促すのは、環境因子です。食物、水、紫外線や化学物資など生活のなかで遺伝子を傷つける可能性が少ない土地柄があるのかもしれません(医療が発達した県でもがん死亡率は減りますが)。
 自殺は本人の置かれた状況によって起きる個人的な行為と考えらがちですが、やはり地域社会の状況や文化にも依存するところがあります。 
 それゆえ、都道府県別に比較するのは無意味ではありません。香川県は温暖な気候と恵まれた食、それにお遍路の土地ということもあり、不幸でない県なのかもしれないです。上記の散布図で「ガン死因比」の広がりが0.85〜1.15のあいだとなり、「自殺比」の広がりが0.8〜1.4となっています。この広がり具合からすると、自殺のほうがより土地柄に依存して起きやすい可能性がありますね。それに比べて、がんは全国的にかなりの程度、均一なのかもしれません。

 悪い基準が最小となる、つまり、残念さが最小の基準は、ゲーム理論でいう「ミニマックス基準」と呼ばれます。それでゆけば「香川県」がミニマックス戦略での最適な選択ということになります。