サイエンスとサピエンス

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最高のSF作家の一人 レム

 20世紀最高のSF作家というと自分は咄嗟にスタニスワフ・レムと答えてしまう。
母国ポーランドでは文学者、思想家としても高い評価を受けているとポーランド人の女性から聞いたことがある。『エデン』『無敵』『フィアスコ』や泰平よんシリーズは今でも褪色していない。
 辛口の評論でも知られていた。
 21世紀になってレムの指摘した傾向はSFジャンル全般を汚染してしまっている感がある。現実と無関係なファンタジーとエンタメのためのエンタメのSFコンテンツが溢れているのだ。
 何というても、そればっかしというのが困ります。
 レムに追従して言えば、アシモフやクラーク、ハインラインなど往年のファンをうならせた作家は、娯楽性という意味では評価できるが、マック的な食後感ばかり残る。
思索性=スペキュレーティブという意味でレムとかなり落差がある。
 やはり人類と現代文明、科学技術を相対化して悠久壮大な視野で弄ぶ、それが他のSF作家には不足しがちなのだ。
 でもって、レムとアメリカンなSF作家連との間で物議をかもしたのが、1972年のダニエル・セイによるインタビューだ。(参考文献)
 例えば、スタージョンの法則をここで持ち出している。「どんなものでも90%はクズだ」!
 それをスタージョンに適用してみせる。ありゃりゃ〜。*1
 この後、アメリカSF界から総スカンを食らった話は有名だ。
 レムは当時のSF全般に「NO」をつけている。とくにアメリカSF全般にだ。アシモフはその代表例というわけだ。
 ホンの一握りの作家だけが鑑賞に耐えうる。ベスター、ル・グィン、ディレニ、ブリッシュ、コードウェイナー・スミスそれにディックだ。
 そして、ディック(このインタビューでは名前が出てこない)には特別な評論をものしている。
 『俗物に囲まれた幻視者』
 オマージュが込められたタイトルではないかね。 

奇想天外NO.4 SFの評論大全集

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*1:ちなみにスタージョンの法則の由来はスタージョン(=チョウザメ)のキャビア以外はクズだからなのだと個人的に思います。