サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

マレーシア航空機の失踪とベイズ推計

 世界中の耳目を集めてるマレーシア・エアラインの失踪事件。もう3日以上経過するのに有力な情報がほぼ皆無。
 どこに消えたか370便?
 何にも情報がなけれど、何か主観的に推定したいというので原子力潜水艦スコーピオンの探索のときに役立ったというベイズ推計を持ちだして、素人推定をしてみよう。
 
 陸上に墜落したというのは、とりあえず排除しておこう。それなりに人口が稠密な地域なので目撃情報もあろうし、発見も早かろうというのが陸上墜落を除く理由である。
 問題を定式化しておく。
現時点でどの海域に墜落したかの確率値をはじき出すのが目標だ。もとよりベイズ流なので主観的確率値である。
扱う海域の区分けは2つだけ。タイランド湾か、マラッカ海峡か、だ。
 下に関係地図を表示しておいた。

 スコーピオン潜水艦の場合のベイズの式はこんな単純なものである。

 pをタイランド湾側で発見される確率とする。最初は当てずっぽうに1/2としよう(主観確率だから許される)
遭難機の探索を行うと結果が出る。発見確率がより高い精度の値に更新される。それを事後確率と呼ぶ。
 p'は発見されない場合の事後確率(まだその海域に沈んでいる確率の意味ともなる)だ。観測による確率の更新値でもある。qは観測する行為による発見確率である。
 以下、二段階での推計値の更新をしてみるとしよう。

1)最初の段階は空からの探索。qは低いであろう。これでpが更新される。
2)次いで洋上からの探索が開始される。qは改善されるが100%ではない。ここで1)のpが更新される

 ここでは空からの探索で見つかる確率q=0.3。当てずっぽうだが、こう仮定しておく。この数日は空からの広域な探索が行われたはずだよね。ところがタイランド湾では見つかっていない。
 計算すると
 p’=7/17=0.41

あまり減少していない。
 他方、マラッカ海峡側で発見される事後確率は1−p’=0.59と上昇している。
今後、洋上からの精度の高い捜索が行われるであろう。その場合、発見する確率q=0.6としておこうか(注意しておくけどこのqの値も主観的な数値で当てずっぽうだ)
 これでもタイランド湾において、何も発見されないとしよう。そうするとそれでもタイランド湾に機体が沈んでいる確率は0.22となる。

 すでに各国の協力でタイランド湾は概ね掃海され尽くしつつあるのだとすれば、マラッカ海峡側に墜落した確率は8割近くになるのだ。
 だが、レーダー探知機から機影が消失してから、マレー半島を横切って低空飛行を続けるなどということがありえるのだろうか?

 海底深く沈んだ潜水艦の発見に一役買っているベイズ推計の当てはめがマレーシア航空370便の探索にも何か言いうることがあるかどうかは、各人の判断に委ねるとしよう。




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異端の統計学 ベイズ

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この本の著者もベイズ派の一人だ。

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