アナログ時計から時刻を読もうとすると、ときおり、秒針が止まって見えることがある。
対象に注意を向けたその瞬間に、時間感覚が変化するのだと解釈してきた。
これが如実に知覚されるのが事故に遭遇するときであろう。車や人の動きがスローモーになる。
この時に知覚に何が起きているのであろうか?
もともと意識はなにものかに向かって作用している。それを現象学では志向性と呼んでいる。志向性が注意向けた途端に倍速モードで対象物から情報を読み取ろうとしているのかもしれない。
注意を向けた瞬間に、志向性フィールドが解放される。そこで起きる出来事を即座的に意識は貪欲に取り込む
そのために時間が停止してみえるのだ。
視覚ではそうだが、聴覚でも時間の拡大が起きるのであろうか?自分の経験ではそれに類したものはない。
視覚のスローモーションが聴覚で起きるとすれば、音声が低波長サイドにシフトするのであろうが、どうもそれはなさげだ。
ヘッベルの魅力的な書物『意識のなかの時間』において近い主題は「第5章決定の時間的枠組み」であろうか。だがしかし、そこではスポーツする人とそうでない人の2つの同時刺激に対する反応時間の差を論じている。差があるがそれは同時性の反応差であると指摘する。同時性の窓というのがヘッベルの巧妙な図式だが、それが瞬間の君臨のタイミングでどのように作用するかは自分にはアイデアがない。
リベットの『マインド・タイム』はもう少し有望そうだが、読み直さねばなるまい。
また、瞬間的知覚あるいは瞬間的志向性の時間的構造についてはフッサールは何を書き残しているかが気になる。
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