サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

STAP細胞の研究疑惑に関する論点

 現時点でますます論文信ぴょう性の疑惑が高まりつつあるSTAP細胞研究であるが、幾つか関係する情報をまとめておく。どちらかと言えば、研究者を擁護する論拠となるかもしれないが、彼らの研究の是非については、とくに意見はないとしておく。

 二つほど関連する情報をメモしておく。
一つ目。
 生物医療分野でイオアニダス(ギリシアアメリカ人研究者)が『Why Most Published Research Findings Are False』(公刊された研究の大半が偽であるのはなぜか?)という論文で、この分野の研究の再現可能性を総括している。
 研究結果の約2/3は再現できなかったということだ。
 つまりは、再現性がもともとあまりない、というか業界全体としてかなり低レベルなのではないかという指摘なのだ。額面通りとはいかないのだ。 
 STAP研究の真偽性は再現可能性にある。それが全てである。過去の過失で判断すべきかどうかは疑問なところだ。

二つ目。
 ジャック・ホーナーという古生物学者がいる。子育て恐竜のマイアサウラなど数々の発見で知られる驚異的な研究者である。有名な『ジェラシックパーク』というB級映画の主人公に模されているくらいだ。
 ところで彼はディスレクシア(識字障害)でもある。自分自身で論文が書けないのだ。このような事例がかなり科学界には転がっている。
 矢野健太郎の『おかしなおかしな数学者たち』やピックオーバーの『天才博士の奇妙な日常』などなどがアンバランス人物列伝を提供している。
 実は有能な研究者だから優れた論文をかけるというのは、大衆の思い過ごしであろう。むしろ欠陥系人物が思いもかけない特異能力を持つこともある。バランスのとれた無傷で無垢な科学者などというのは幻想だろうと思う。
 ラファティの『素顔のユリーマ』モデルもあるということだ。


 

天才博士の奇妙な日常

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おかしなおかしな数学者たち (新潮文庫)

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もちろん逆のケース。科学者のモラルハザードも事例がたくさんある。

背信の科学者たち―論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか (ブルーバックス)

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