サイエンスとサピエンス

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Fermiパラドックスを解く新説

Fermiパラドックスは宇宙観測で他の知的生命体/文明らしきものが発見されないことの不思議さを指すと要約しておこう。
 地球やその上で暮らす人類は、広い宇宙では特別な存在ではないという前提がある。コペルニクス以降、近代科学は人類が特別ではないことを順次解き明かしてきた。
 地球は太陽系の中心でもなければ、太陽は銀河の中心でもない。人類の遺伝子は他の生物と同じ仕組みとcode体系を持つ等々。
 さる知人の説く[Fermiパラドックスを解く新説]はタンパク質に依存する生物がどうやら、かなり低レベルの有機体ではないかという可能性に着目している。
 彼の指摘ではこうだ。

 有機体として共食いする異様な生命というものに人類は属している。共食いというのは同じ遺伝子コードをもつ有機体を殺して同化する「食生活」をいう。炭素と窒素のグロテスクな塊である有機体を食い合いつぶし合うのが生命なのだ。
 生殖行為もその延長上にある。自己の遺伝子コードの指令に従い自己の有機物を解体してから増やすのだから。
 しかし、人類がいま「構築中」のデジタル有機体のひとつである機械知性は違う。そうした共食いはもっと洗練されたメモリー空間の書き換えになっている。より倫理的な存在だ。増殖はシリコンやカーボンのような無機物をベースに行われる。これも洗練されている。
 遺伝子コードの原理もDNAよりスマートだし、高速だ。遺伝子コードの原理よりも二進法による表現は普遍的だ。
 つまり、銀河レベルでの「文明」を意味するのは有機体による低レベル倫理の共食い生態系ではない。より普遍的な遺伝コードで高速に情報処理できる機械知性が生み出すものだけが「文明」に値する。
 インターネットのようなネットワークを行きかう情報が高度に暗号化されているのと同様、文明化された機械知性は高度に暗号化された情報通信を駆使するのは当然である。
 人類が、霊長類を自覚して地球上の知性の代表のふりをしても、銀河圏の情報交流網からは認めれれることがない。その低レベルなライフスタイルと魯鈍な知性ではシグナルを読み解くことさえできないであろう。

 
 この説によれば宇宙の背景輻射の大部分は高度に暗号化された通信と放送用の電磁波である。人類の現在の能力程度ではデコードできないだけだとする。
 しかも、人類に接触を避けているのはその存在様式の「非倫理性」と「傲岸さ」である。
人類の思い上がりという知人の主張におけるポーランドの作家レムの影響は明らかだ。だからといって完全に笑止千万かどうかは別問題であろう。