サイエンスとサピエンス

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ティコ・ブラーエの天文台跡

 ケプラーが超一流の数理天文学者であったとしても、ケプラーの三法則はそれだけでは発見出来なかった。
一流の天体観測家であるティコ・ブラーエがいなければ、近代的な天文学は生じることがなかったかもしれない。
 時代を超えた精密な観測結果がケプラーの数理的天才に提供されたからこそ、惑星軌道の法則性が見出された。

 デンマーク貴族で占星術研究家でもあったティコはルドルフ二世に召抱えられていた。今はスウェーデン領となっているVen島に当時として最新鋭(といって天文観測の設備などは知れたものだったろう)の天体観測所を設置した。神聖ローマ皇帝ルドルフ二世の性格は錯綜したものだった。神秘主義とグロテスク、錬金術と芸術鑑賞、博物学と猟奇志向、それに占星術などが彼の興味をひきつけてやまない。そこから近代科学がひこばえのように派生するのも見逃せない。
 幾多の彗星の観測や新星の記録などもティコ・ブラーエにより初めて定量的に観測結果が残された。
 この貴族は銀の鼻をつけていた。決闘で失ったのである。死に方もユニークなものだった。膀胱の破裂で死んだとも言われている。近年になって水銀中毒が死因であり、その死にはケプラーが関与したなどという説が登場した。けれども2010年の遺体発掘調査の結果、それは否定されている。


 現在、その場所にはティコ・ブラーエ記念館がある。誰か日本人で訪れた人がいるだろうか? 確かに、Ven島はデンマークスウェーデンの間にある。



 この名著でルドルフ二世の奇想の帝国がいかに末期的で独特なものかがよく分かる。

魔術の帝国―ルドルフ二世とその世界 (テオリア叢書)

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