アスペルギルス属のオリゼというのが日本の麹菌の名称である。この菌は有毒であると20世紀初期には判定されていた。
中野政弘によるとこうなる。
チャールス・トムの『アスペルギルス属カビ類』という大冊な分類学書が一九二六年に発行され、世界中の菌類学者の間では権威ある教科書となっているが、そのなかに日本のこうじきんのオリゼは、フラーブスのなかに含まれて記載されていた。
このアスペルギルス・フラーブスとは有毒菌種である。アフラトキシンという発ガン物質を生み出す。肝臓がんの原因ともなる。
もちろん、麹菌はそんなものを分泌したりしない。
このミスを日本人研究者が指摘した。しかしながら、時すでに遅しと中野政弘は書いている。
チャールス・トムは一九五六年に病没した。その研究の後継者であるフェンネルはフラーブスとオリゼはトムの著書では別のものであることを認めて、「アスペルギルス・ブック(教科書)はミテークであつた!」という書簡を同学の士宛によこした。 一九七〇年の十一月のことである。そのフエンネルは一九七七年に自血病で六〇歳の生涯を閉じた。
思うに、アジアの片隅の菌種の細目などは有毒に見えたであろう。当時の和食に関する知識などはイギリス人にほとんどないに等しかったであろう。
【参考図書】
- 作者: 中野政弘
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