つい先月もグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)の白化現象が壊滅的なダメージをこの世界最大のサンゴ礁に与えているというNewsが出ていた(AFP「豪グレートバリアリーフの白化、想定より深刻 専門家が警告」5月29日)
これまで毎年のようにオーストリアのサンゴ礁の哀れな状況が報じられてきた。
まるで恒例行事のようだが、今にして思えば、深刻かつ本格的な全世界への警告の開始はロンドンで専門家J.E.N. ヴェロンの講演があった2009年7月6日の午後だったのだろう。また、この年に『A Reef in Time: The Great Barrier Reef from Beginning to End』を出版している。
ヴェロンはその長い人生をサンゴ礁研究に捧げてきた。前半生は新しいサンゴ礁の発見、後半生はその死滅への道行きを観測するという皮肉な運命を持ったオーストラリアの研究者だ。
最初に報告された世界規模の大量白化は1981 〜 82年に起こった。次に大量白化が急増したのは1997 〜 98年で,50カ国以上のサンゴ礁が打撃を受け,アラビア海の温水性サンゴまで白化した。グレート・バリア・リーフでは,この白化は海水温が観測史上最高を記録した時期と一致した。
2001年から2002年にかけてのさらにひどい大量白化ではエルニーニョとの密接な関連が裏づけられた。
I. マカルマン(豪シドニー大学)『グレート・バリア・リーフの嘆き』(日経サイエンス2014年10月号)
これはほんの序の口だったのだ。
2000年来このかた17年間、まったく歯止めがかからなっていない。
一昨年にはグレート・ダイイングがとめどなく広がっているという調査結果がでた。
オーストラリアの政府機関の一つ「Australian Research Council」が行った調査では北部および中央部の珊瑚礁のうち約35%が死んでしまっているという、これまでで最悪の結果が明らかになっています。
我らの生きているうちにサンゴ礁の消滅が見られるのはほぼ間違いなし、というのは手放しで歓迎できる事態では、断じてない。
それにしても20年間以上の無為無策というのは現代文明の理知と環境倫理の欠如を物語ってはいまいか。
【参考文献】
エコでないマイカーだけでなくおそらくは海外旅行などという大気撹乱行為もサンゴ礁の死滅に貢献しているであろう。なので、この本の著者も地球を飛び回る環境保護活動で温暖化を促進するという皮肉なめぐり合わせを実践しているように見える。
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グレート・バリア・リーフへのJ.E.N. ヴェロンの嘆きの声。
A Reef in Time: The Great Barrier Reef from Beginning to End
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