日本の中央部に位置する富山湾、駿河湾、相模湾は「日本三大深湾」である。
いずれも湾内において急峻な峡谷が海底まで続いており、一挙に1000メートルも降る。
富山湾は富山海底谷と呼ばれ1000キロにおよぶ峡谷を形成している。
駿河湾も同様に急速に深みをます海底地形であるが、その中央部を駿河トラフ(溝)がつらぬいている。
なかでも相模湾は相模トラフ上にあり、それがそのまま房総半島の南東沖で伊豆・小笠原海溝につながっている。
ここは世界で唯一無二の海溝三重合点であるとされる。つまり、太平洋プレートとフィリピン海プレートと北米プレートの接する合点であるわけだ。
このような深淵の間近に住んでいるかと思うと足が竦んでしまう。関東平野なんてちっぽけでようやく靴を濡らさずに歩ける広さでしかないと錯覚しそうだ。
これらの湾はいずれも生物種の宝庫である。
富山湾ではシロエビやバイ貝、ベニズワイガニ、「奇妙な生き物」オオグチボヤ、それにホタルイカが名産です。約500種ほどいるとされる。
駿河湾では1200種の魚類やサクラエビも有名ですし、古代魚ラブカなど深海魚が豊富です。また、相模湾では魚類1300種が棲みつき深海性のタカアシガニなども有名だ。シーボルトやモースもここの標本を収集した。
海産物には恵まれているわけだ。なので沿岸部の人びとは豊富な魚をいつでも食せるのである。
富山湾には立山など北アルプスがひかえ、駿河湾には富士山が、相模湾には丹沢や足柄山などがある。火山のお膝元の河川が滋味豊かなシルトや有機物を運ぶがゆえに世界でも有数の生物種の宝庫になっている。これは多とせねばなるまし。地震や火山噴火と引き換えに海産物を獲得していると言えなくもない。
そういえば伊豆半島は遥か遠洋からやってきて列島に合流したとされる。その圧力で箱根山ができたわけでもないが、インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突してヒマラヤ山塊が生まれた構図に似ていなくもない。
それにしても、関東平野の目と鼻の先に、房総半島沖にプレートの三重交点があるのは、なかなか不気味であり有難くもある。
【参考文献】
日本近海が生物資源の豊穣の海であることは客観的に証明できているんですね。
- 作者: 北里洋
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「世界で唯一無二の海溝三重合点」の記述はこの本から。この分野の最新の成書だ。
なにせ深海探査では先進国であり、目と鼻の先に海溝が拡がっているのだから、研究対象には恵まれているわけですね。持論ですが、海洋探査は宇宙の有人探査より、日本は効率よく研究できるわけでありますから、よほど世界に貢献できるんじゃないでしょか。
- 作者: 中西正男,沖野郷子
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【映像 サイエンスチャンネル】
『相模湾を探る』は相模トラフの深層&真相をあばいてくれる。歴史もわかる。