サイエンスとサピエンス

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ゾウリムシのイコノロジー

 生物学の授業でおなじみのゾウリムシ( Paramecium caudatum )は顕微鏡が発明された時代から人類とのおつきあいが続いている。
でありながら専用のブログも見かけない。研究対象としては大腸菌に見劣りするのは事実だし、ユーグレナのように儲けることもできない。ゾウリムシという平板なネーミングとなった時点で負けているようだ。
 それでも、顕微鏡の進歩につれて、だいぶ見え方が変化してきている。
科学の進歩によるゾウリムシの造形の見え方が変わりつつあるのだ。

 昭和の頃のゾウリムシの画像の代表はこんなものであろう。
 往時の教科書である沼野井春雄 『動物学概論』から持ち込んだ画像だ。1954年の改訂版である。

そして、8年後に出版されたフィンガーマンの『比較動物学』の画像である。
両者ともに光学顕微鏡と初期の電子顕微鏡の写真をもとに図式的に細胞の内部まで描いている。
 細胞器官を詳細に描いくのがこの白黒線画の意図なのであろう。

 
 ここまでは親しみを感じるゾウリムシの姿であった。
だが1999年の『Essential細胞生物学』になると異様な外見が現れる。位相差顕微鏡の威力なのだろう。

なんだか毛むくじゃらのキモい姿だ。昭和の頃のスッキリしたスリッパのような味わいはまったくない。とてもケモノ・ケモノとしてる。単細胞生物界の「sadako」である。
 いやな感じの生き物に思えるのだが、人によってはモフモフでキモかわいいという感想もありえるのだろう。
 拡大されるに従い、生物=細胞ワールドはとてもとてもおどろおどろしいグロッタに思えてくる。

ゾウリムシの動画もあるでよ。


とくにこの映像ではゾウリムシを固定しておいて、繊毛による水流がわかる。

【参考文献】
 大学では動物学っていう科目は古くて存在しないのかもしれない。教科書も古いのしかないようである。

動物学概論 (1954年)

動物学概論 (1954年)

比較動物学―アメーバからヒトまで

比較動物学―アメーバからヒトまで