サイエンスとサピエンス

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aibo復活とアクチュエータ

 SONYが12年ぶりにロボット犬「aibo」を復活販売する。懐かしい限りだ。
12年間の半導体とアクチュエータ、それにソフトウェアの進歩を取り込んで、素直に進化した製品になっていることであろう。
aiboでは22個の自由度を持つとされる。つまり、アクチュエータは22個あるという意味だ。これだけ滑らかで自然の動きをするためには普通のモータでは間に合わない。
 この小型アクチュエータ、言い換えれば高精度小型モーターは、日本のお家芸ともいえる技術だ。現在のモーターはトルク制御だけではなく、回転角までも指定できるタイプが出現している。
 それがステッピングモータだ。その特性からNC(数値制御工作機械)に多用されている。このモータは指定角度とトルクで正確に動作するのだ。

 簡単にモーターの歴史をおさらいする。
 はじめにエジソンあリき、だ。直流モーターを商業ベースに成長させた。その鬼子というべきがニコラ・テスラであり、交流モーターを発明した。エジソンのGE(ジェネラル・エレクトリック)を猛追した。19世紀のアメリカがモーターの発祥の地というわけだ。
 ドイツ人のスタインメッツが交流モーターをGEに入ってから革新する。イギリスでステッピングモータの原型が考案される。フランス人のウデーなども基本的な考案を出している。それを産業化したのは20世紀中盤までのアメリカであった。
 しかしながら、20世紀後半の小型精密モーター開発を牽引したのは日本の技術者たちだ。
ヤギアンテナで有名な八木秀次門下の山本秀雄は戦前に山洋商会を立ち上げ、航空機用無線電源などを製造していた。敗戦で軍需産業の解体対象であった山洋電気サーボモータアメリカの技術を見習いつつ開発。
 その前の八木秀次と山本秀雄の逸話が懐かしい。
 公職追放を受け空襲で家を焼きだされた八木秀次を助けたのは山本秀雄であり、後に参議院議員になった八木秀次は正月に山本家に挨拶を欠かさなかったという。
 そして、山本も玄関で畏まって恩師を迎えた。こういう師弟の関係はもうどこにも見られないかもしれない。
1966年に山洋電気IBMからステッピングモータもサンプル注文があった。ロータの精密工作が可能なメーカは世界でも限られていたのだ。

 これは小型モーター開発のひとコマでしかない。しかし、重要で典型的なひとコマだ。こうした技術集積がなければ、小型のラジカセやCDプレーヤーなどは生み出せないのだ。SONYが築き上げたWOLKMAN文化に不可欠な技術要素が高精度小型モーターであったし、それが家電やカメラで果たした役割は絶大なものがあろう。
 最後に、忘れてならないのは、根本的なモーターの技術革新の一つ「超音波モーター」を発明したのが日本の技術者であることだ。
aiboの開発の舞台ウラには、このような積もり積もった物語りがあるのだ。ソフトウェアとかAIだけではモノづくりにはならない。

SONY AIBO(ERS-311B/C)

SONY AIBO(ERS-311B/C)


イラスト図解 最新小型モータのすべてがわかる

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