サイエンスとサピエンス

気になるヒト、それに気なる科学情報の寄せ集め

GE(ジェネラル・エレクトリック)とカート・ヴォネガット

 あのGE(ジェネラル・エレクトリック)が不調だそうである。強電部門(原子力発電など)が足を引っ張っているというから、東芝の不調と似ているのかもしれない。一頃はジャック・ウェルチの経営のもと怖いもの無しの超優良企業であったが、栄枯盛衰は免れないというわけだ。
 そのGEにバーナード・ヴォネガットという気象学者が働いていた。20世紀アメリカ文学で最大の影響力をもったというカート・ヴォネガットの兄である。
 この兄の方は1997年にイグ・ノーベル賞を受賞している。なんでも『ニワトリの羽が千切れる現象を指標とした、竜巻中の風速の概算方法』が評価されたらしい。
 このタイトルだけでもカート・ヴォネガットの血筋である証拠だ。
 その関係もあってか、GEの広報部門でカート・ヴォネガットが働いていたこともあった。結局の所、反りが合わなくて短期間で離職したようだが、そのセリフが振るっていた。
「GEはサイエンス・フィクションだった」

 同じ頃、ノーベル化学賞を受けたラングミュアもGE専属の科学者だった。
なんと!バーナード・ヴォネガットと組んで人工降雨実験を行っている。
 カート・ヴォネガットの代表作の『猫のゆりかご』のなかで人類を破滅させる「アイスナイン」も科学的な背景がある。1960年台に世界の科学者たちを巻き込んだ「ポリ・ウォーター」事件だ。ソ連科学アカデミー物理化学研究所の重鎮が「通常の水(water I)とは性質がまったく異なるwaterⅡ」について論文を発表した。なんと300篇近い論文が出されたという。
 「水」の専門家である荒田洋治によると。

“異常水"は,すべてが水の常識をはるかに越える。“異常水"は,150° Cを越えても沸騰しない。粘度は通常の水に比べて1桁以上高い。密度は14g/cm 3に達する。

 ご存知のように、そんなものは存在していない。
 世界の科学界を揺るがした10年間のから騒ぎはJ.D.バナールの決定的論文で消え去った。バナールも2年間を異常水の有無の判定に捧げたのだ。

 というわけで、『猫のゆりかご』に出てくるイカれた科学者と「アイス・ナイン」はラングミュアがモデルであったという、自分には興味深い結びつきを書き留めておきたかった。


 なぜか全然再版されていなんだね、この名作。

 こちらのラングミュア伝もそうだ。

ラングミュア伝―ある企業研究者の生き方 (1978年)

ラングミュア伝―ある企業研究者の生き方 (1978年)

 ポリウォーターを扱った本はこの書籍くらいであろうか。水の科学を多方面から考究した良書であるのに入手し難いようだ。

水の書 (PNEモノグラフ)

水の書 (PNEモノグラフ)