明らかな事実として、哺乳類の種の消滅は文明、「近代」文明の進展とともに加速してきている。
一八〇一年から一八五〇年までの五〇年間に11種が絶減し、一九〇一年から一九四四年までの四四年間に43種が絶減している。四年半に1種となり、一年と少しで一種が減びるようになった。そのままでいけば、西暦二〇〇〇年には、 一日一種が絶減する
と今泉忠明は記しているのは、1999年の時期である。
哺乳類と限定したのは他でもない人類=ホモ・サピエンスと生存空間が重なるうえに、狩猟の対象になりやすいのだ。野生動物は滅ぼされる。生態的なニッチが人類と一致するというのは彼らの生存にとっては脅威となる。
生きるすべはドンドン人類に侵食されてゆくほかない。一部の動物愛護主義者の抗議などは、その侵食力に比すればあえかなものだ。
そう、それは歯止めが効かない。
だが、問題は、その先にある。
同じ空と大地のなかで生きる哺乳類を「粛清」しさった後、人類は繁栄のピークを極める。それと同時に大いなる没落を開始するのは確実だと思えるのだ。
一切の同類たる野生の哺乳類が抹殺され、やせ細った大地には人類の生き延びる余地などはないであろう。
なぜ、そのような黙示録的な発言をするか?
種の多様性こそが安定的な生存空間を維持するために必須であるにも関わらず、それを激減させているからだ。哺乳類はその指標の最たるものだ。なかでも象の種の減少は例証になる。ローマ帝国はアフリカ北部の象を滅ぼしつつ、自らも亡んだ。
その傾向は有史以前から、おそらく12000年頃に始まる大型哺乳類の絶滅から目立ち始め、有史以降にきわめて顕著になった。
各地の工業化と新興国の勃興でそれはますますヒートアップするであろう。
野生哺乳類の種の消滅を人類の残存時間として、カウントダウンしてあげたほうがいいであろう。
また、科学人類学のラトゥールの説を援護的に表現するならば、
哺乳類の消滅は周縁の消滅となり、中心へ収奪する価値があるものが消失するターミナルになるだろう。
アフリカで多発する象牙密売のための象殺しは新興国の金持ち需要に応えるグローバル経済活動だが、これも周縁が自らを抹消すると言えなくもない。
オプティミストのリドレーやコトラーが「今が人類の繁栄期」とするのに異論はない。
しかし、その一大繁栄の反動、代償が襲来し、そのネクストステージがこれまでの延長ではなくなることを恐れる。ひたすらに恐れている。
環境変動による絶滅が地球史規模でなんども起きている。それに比較してこの時代の種の消滅はハンパない。
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