捕食者の居なくなった土地が自然保護地区ですら、荒れ始めるというのは有名な事実である。
イエローストーン公園に野生の狼が戻されたのは1995年だ。それより70年前の1926年に最後の狼がしとめられた。しかし、森林の減少は20世紀後半になりだれの眼にも明らかだった。その原因についての長い論争に決着をつけたのは生態学者たちだった。
ベネゼエラのグリ湖では、より過酷な事態が進行した。その観察者の主役は生態学者ジョン・ターボーだ。
ダム建設により生じた世界最大級の人造湖がグリ湖なのだが、その貯水過程で多くの孤島が生まれた。その島で進行した生態系の変化のリサーチを1992年から開始。
成果は2000年のサイエンス誌に発表された。多くの島は極相期に入り森林は消滅、動物たちは消滅していった。一時、島に繁栄していたアカホエザルは吠えることもなくすっかり社会性をなくした(この後、干魃により島から逃げ出すことができたそうだ)
熱帯雨林が、荒れ地かイバラだらけの草地だけに成り果てる様は衝撃的だ。
これも捕食者が消滅すると何が生態系に起きるかを示していると考えられている。
数々の賞を勝ちえたドキュメンタリー『Strange Days on Planet Earth』(2008)を観ていただこう。
ストイックなジョン・ターボーが登場するグリ湖の話の後、イエローストーン公園の狼再導入が語られる。その冒頭で、最後の一匹が追い詰められるシーンが切ない。
ベネゼエラのグリ湖の島々の模様を観てほしい。
元ネタはこちらである。保全生物学の啓発にはこれを読めばいい。
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シートン動物記の「狼王ロボ」は名作だ。愛妻ブランカが殺戮されて、その死骸を囮にまんまと罠にはめられるのだ。
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孤高の王者ロボの最後の写真がある。シートンの撮影したものだ。 白人の侵略に最後まで抵抗した北米インディアンのシッティング・ブルと重なりあうものがある。シートンは恥じていたという。