ジャレッド・ダイヤモンドの『文明崩壊』を遅蒔きながら、読了した。
モンタナ州の現状が長々しいけれど、それが地球環境のひな型であると考えれば許容できる。ほとんどの文明の崩壊を招いた原因は「森林破壊」だとして、著者は幾つかの顕著な事実を突きつけている。松永勝彦の著書を参照すれば、そのメカニズムは知れる。あるいはヴィルヘルム・ウェーバーの『アッティカの大気汚染』もその傍証であろう。
だけどもギボンや弓削達などの歴史学の研究者は首肯しないであろう。
著者は進化生物学と生物地理学の研究者だ。それが考古学者や歴史学者の縄張りに侵入して、生態系的な破滅要因説を主張した。確かに、エコロジーばやりの昨今には受けがいい主張であると思う。
なぜかといえば、現代文明の状況に目を奪われているからだ。四六時中、アマゾン流域開発や熱帯雨林の破壊について報道や警鐘が打ち鳴らされているのだ。
誰が反論できる?
素粒子物理学者アルヴァレスが恐竜の絶滅にディープ・インパクト(隕石落下)説で登場し、古生物学者たちの反対の大合唱を蹴散らしてしまったのを思い出す。突きつけられた事実の勝利だ(一部の恐竜は生き延びたともされるが)
J.ダイヤモンドは考古学者や歴史学者の入り組んで結論が見えない文明崩壊説よりは、シンプルで現実に則したモデルを提示したと言える。
エコロジカルな生存基盤の崩壊により現代社会が滅ぶという立場は強固な理論であると思う、現代人にとってはね。
それでも、一部の留保をつけておきたい。
現代文明は、ダイヤモンドが引き合いに出した幾つかの崩壊社会=中米のマヤ、北米のアナサジ族、イースター島、グリーンランドのノルウェー人就職知などと同じ要因で瓦解するか?
ダイヤモンドはその可能性が高いとしている。
自分はそう単純ではないと思う。差し当たり、ギリシア・ローマ世界の没落モデルがダイヤモンドの理論から外れていることを何処かでまとめてみたい。古代ローマ帝国は森林破壊では滅んでいない。その後の歴史が語るように森林や土壌は復旧せずともローマは何度か甦るのだ。
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