斯界の権威ナンシー・レヴソン教授の待望の訳本が上梓された。米国で出版されてから10年遅れというところ。日本でのこの分野の遅れを反映しているかのようだ。
STAMPはAIとシステム安全における「安全分析」に本質的な役割を果たすと目される。従来のシステム要素に分解して安全性を評価するFTAやFMEAとは異なる手法として国内外から注目されていた。
とりわけ事例研究のブラックホークダウンは示唆的だ。
複数の司令塔=意思決定機関(AIシステムとみなしていい)がIFFというサブシステムの不具合により如何に負の連鎖に落ち込んだかがSTAMPにより浮き彫りにされる。
担当部門での不十分な通知や作戦理解がサブシステムの不調と組み合わさると同士討ちが起きてしまうのだ。
複数組織と当事者の証言は、まるで黒沢映画だ。羅生門的といっていい。
一部の機能が働かないと当事者たちは都合のいい情報しか認識できなくなるようだ。
言い換えると「安全に作業している」状態はクリティカルなタスクと機能が順次連動して、安全で信頼できる状態を維持していることになる。「状態の正しい認識」は観測結果から正しいフィードバックを受けることで本来のミッションを遂行するのだ。
「バトルフィールド」に限らずシステムが作動している「フィールド」では、こうしたクリティカルサクセスチェーンがサイクルしているはずだ。
STAMPの構造はスタティックである。なものでどのような事象の連鎖でハザードが発生したかについては可視化しにくいち
クリティカルサクセスチェーンという自分の方法論とも共鳴するものがありました。