サイエンスとサピエンス

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腸は考える

 藤田恒夫氏の『腸は考える』と河合隼雄の『日本人の心の行方』にヒントを受けた。
「腸は小さな脳である」とする腸専門家がいる。
これは本当であった。
 現にコロンビア大学内科・外科教授マイケル・D ・ガーションは、消化管に捧げた著作『セカンドブレインー 腸にも脳がある』をものしている。

 ところで河合隼雄は上記の本の「6「死生観]の危機」でこう書いている。

柳田邦男の報告しているように、父親が来室すると脳死状態の息子さんの血圧や心拍数があがるという事実

 そこで河合隼雄が指摘するのが、脳以外の臓器の「意識」の所在である。胃や心臓、腸にも意識があってもいいじゃないか。
 たとえば、腸は藤田恒夫が説くように、腸には高度なセンサーがあり、複雑な化学処理を柔軟にこなしている。腸がなくても生きて行けるのは医学的事実であるとしても、腸や胃が自律的な顫動運動をしているのも確かなのだ。

 脳に局在して「精神」が宿るというのは、近代的な物語りの一つでしかないと言い放っても良いのではなかろうか。
 現代人が脳死問題などで、五体や身体を軽視するのは軽率さや傲慢さの現れなのかもしれない。

腸は考える (岩波新書)

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日本人の心のゆくえ

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