ある出版社とは「創土社」であります。そのむかし、ジャン・パウル全集を刊行しようとして名物翻訳者が途中で亡くなった。それがニュースにもなった記憶がありますね。現在、大物としてはホフマン全集を刊行中である。お化けのホフマンを出し続けようとしていることからもうかがわれるように四半世紀前はこの出版社の幻想文学系の翻訳が、出版界で一目置かれた時期がありました。
当時買い揃えた『M.R.ジェイムズ全集』や『ラブクラフト全集』『ブラックウッド傑作集』などは創元推理などの文庫本に引き継がれ、根強いファンを有しているようです。
先ごろ、古書店で『サキ選集(中村能三選訳)』をゲットしたので、思い出しているあります。奥付をみると昭和50年の印刷で、住所は文京区水道となっています。
ダンセイニは荒俣宏訳で始めてここから出たのではなかったか。シャルル・ノディエもあったし、エーヴェルスなどドイツ系の幻想作家がラインナップにあったはずである。そういえば、ビアスの『悪魔の辞典』はこの出版社から買ったんでした。
ほとんど手元に残っていないのは残念であります。
なんでこんなショウモないハナシをしたかというと、先ごろゲットしたここの「忍者のなんとか」という書籍が、なんとも零落ぶりを痛切に感じさせたからなのであります。
あー已んぬる哉!
ここまで歴史と挟持のある出版社がねえと言わしめるものがありますもの。
むかしのような気概がうせたとでもいうのでしょうか、業界でのポジショニングがうまくいっていない気がします。
とはいっても、ジャン・パウル全集への第二のチャレンジはぜひここに頑張ってもらいたいですし、ホフマン全集の完結も待ち望まれます。個性的な出版社をおおくの人は待ち望んでいるのはむかしも今の変わりません。