南方熊楠の名声と評価はこの四半世紀で様変わりした感があります。
おおむかしは笠井清の労作『南方熊楠』しかありませんでした。その後、鶴見和子の『南方熊楠』が現れて話題をさらってからが、彼の再発見になったようです。
大博物学者というまっとうな評価は当然として、奇人変人として扱うのも面白いのですが、知識をなんでも貪欲に吸収しようとした、その目論見が明治人らしい。
「われ、東洋のゲスナーならん」
遅れてやってきた博物学者ですかね。しかし、帝国主義者の片棒を担ぐことはしなかった。
もちろん、エコロジー教徒の崇拝対象にも祀り上げられています。地域再生のヒントや柳田民俗学との交渉の歴史も十分な価値はあります。
なによりもそのライフヒストリーは興味深いものがあります。イギリスでの華々しい武勇伝、学問の知己や友人たちとの交流、柳田国男との接触と別離、奥さんや子どもとの関係や地域の人々との共闘もあります。
その名声の拡大に比例して伝記や評伝もいくつか出ています。ここではそのうちの少数をリストしておきます。
笠井清の労作。むかしはこれだけが頼りでした。
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南方マンダラがここで衆目を集める。
- 作者: 鶴見和子
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読んでしみじみと分かる熊楠の華麗かつ哀傷の人生
- 作者: 神坂次郎
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この奥さんはほんまに辛抱して夫を支え、その没後も仏前の奉仕を欠かさず続けました。
- 作者: 阿井景子
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森羅万象を掌中にせんとした衝動とその全容を記述する。巨人の知を一触できるでしょう。
- 作者: 松居竜五
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- 作者: 松居竜五,中瀬喜陽,月川和雄,桐本東太
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書簡集にて柳田国男との思考の交渉の歴史、知の巨人による壮大なバトルが演じられる。
神社合祀反対運動や山人、塚談義も二人の真理追求から始まる。これは必読でありましょう。
- 作者: 柳田国男,南方熊楠
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柳田国男・南方熊楠・往復書簡集〈下〉 (平凡社ライブラリー)
- 作者: 柳田国男,南方熊楠
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【オマケ】中沢新一が南方のポストモダン性を読みといてみせます。あまりに現代的すぎて陳腐です。
でも、エントランスとしてはこれ以上ない内容ですね。
- 作者: 中沢新一
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