このところ、太陽活動に関するニュースをウォッチしていると相反する二つの見解が交互にニュースになっているのに気づかされる。天文学者たちが太陽について思い乱れている様子が浮かんでくる。
「太陽活動が低迷、マウンダー極小期以来の小氷期が来る!」
というのと、
「太陽は黒点数が増えてきて活動期に入り、来年には磁気嵐が増える!」だ。
これは、まったく紛らわしい限りだ! ここでは議論を整理しておこう。
1)太陽が活動期に入る系の記事
この系統の記事は「観測」をもとにした記事である。「予測」でじゃないので、信頼はおける。だから、長期にわたってどうなるかは語っていない。
・「Wired」4月の記事「活動期に入った太陽」は黒点数が増えてきている観測などに基づくニュースです。
・国立天文台の太陽観測所「太陽活動データベース」は観測データとして後者を支持する。下記の「太陽黒点数の時系列グラフ」では増大しているのが読める。黒点数は活動期になると増大します。
・今日の宇宙天気情報 -- 宇宙天気情報センター(NICT) も国立天文台と同様だ。
http://swc.nict.go.jp/datacenter/daily_latestnews.php
・激烈な磁気嵐の警告は「Wired」の2009年の「記事」に現れた。
2)太陽が停滞期に入る系の記事
上記と反対の記事も目につく。だが、基本は確実な観測データではなく、トレンド分析からの予想・学説である。
・2011年6月の記事「太陽活動、17世紀以来の休止期に突入か 米研究」は米国立太陽観測所の研究者の見解をafpbbが報じている。
・ナショナルジオグラフィックの記事が「太陽黒点なし、百年ぶりの活動極小期か」2009年8月にあった。
また、「太陽が極小期に突入する3つの証拠」の記事は2011年6月でこれは「afpbb」のものと同じソースだ。
だが、今年の3月には「荒れ狂う太陽、活動極小期を脱する?」としている。
・今年の日経新聞の5月の記事もナショジオと同じネタだ。NASAの太陽活動亢進=地球温暖化説まで登場してくる有様である。
地球温暖化の犯人を太陽とする説は少数派であるけれど、懐疑論者や太陽を研究する天文学者、例えば桜井邦朋氏などには人気がある学説であるようだ。
その説を解説している珍しい理学書はこちらである。
【12/01/26追記】
著者のスベンクマルクは最近、脚光を浴びている。太陽活動が低下すると太陽の磁場が弱まる。さらには太陽系を取りかこむ磁力網が弱まり、地球に降り注ぐ宇宙線の量が増加する。その結果、雲量が増えて大気温度が低下するという説を提唱している。スゴイ仮説。回りくどいけど、裏づけデータはあるらしい。なんといっても霧箱(素粒子観測で使うヤツ)の原理が雲発生と同じというのは、目からうろこですね。
- 作者: H スベンスマルク,N コールター,桜井邦朋,青山洋
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しかも太陽観測衛星「ひので」が「太陽北極域で異例の磁場反転」を観測してるものだから、俄然注目なのだ。太陽がどうなるのか予断を許さないかも。
あるいは一般向けにはこれも読みやすい。
- 作者: 桜井邦朋
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以上、見てきたように太陽活動のイマと今後に関する意見は専門家の間で分かれている。地球温暖化の紛れも無い進行と2012年には変動がくるという「預言?」もあるなか、太陽活動の二つの説は来年には決着がつくだろうか。
黒点長期の観測履歴はこちらにも書いている。
http://d.hatena.ne.jp/Hyperion64+universe/20110808/1312808025
【08/05追記】ナショナル・ジオグラフィックのニュースが流れた
『大規模な太陽嵐で電力停止の危険性』
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110804003&expand&source=gnews
磁気嵐は太陽活動が盛んになると出現するであろうから、1)に属するわけだろう。
【08/14追記】フォトンベルト伝説
太陽活動は2012年のマヤ暦の「大いなる節目」というお話となるネタだ。この話題は、地球温暖化とも妙に混じり合うので何かにつけて注目される。ドキュメンタリーDVDもある。一人のドイツの学者が神話とも精神分析ともオカルト、数秘学のうんちくいっぱいの講話をしてもらえるマニア好みの内容だ。
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【09/02追記】太陽観測衛星で「地球環境に変動?太陽北極域で異例の磁場反転」
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20110902-OYT8T00266.htm
太陽の大域的な磁極異常が観測された。影響はどうかは未知数。地磁気に大きな影響を与えるなら興味深い(磁北極が連動して反転したりして...)
【11/12追記】地球をにらむ太陽の巨大黒点
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20111111002&expand#title
ナショジオの記事は巨大黒点がその磁力線の銃口を地球に向けているという脅迫的な内容である。どんな現象が生じるか予断を許さないという書きぶりだが、高緯度や高高度での危険は顕在化しているのであろう。確かにアメリカ中部でのオーロラが観測された。美しくもそら恐ろしい感じが漂う。
活動は沈静化しているのか、それとも活発化しているかは、やはり不明だ。
【2012年01月13日追記】天体観測に詳しい関係者の話
天体観測情報とオーロラに関する最新な情報に詳しい遊造のCEOのお話しによれば、太陽活動は徐々に戻ってきているそうだ。黒点は増えつつある。マウンダー極小期にはなりそうもないが、かと言って逆の太陽の凶暴化もなさそうだとのことでした。
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【関連情報有償配布】太陽黒点数の時系列データと世界人口、世界GDPなど8つの時系列情報を配布してます。
*1:地球規模ジェットコースター映画の『2012』(エメリッヒ監督)というのもあったねえ。こっちは純然たるホラ話の娯楽として楽しめた。